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2013 Fiscal Year Research-status Report

博物館における全天周科学映像の開発および評価に関する人文・社会学的研究

Research Project

Project/Area Number 24501275
Research InstitutionNational Museum of Ethnology

Principal Investigator

松岡 葉月  国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (80573740)

Keywords博物館学 / 博物館教育学 / 博物館映像展示学 / 全天周科学映像 / 博物館観客調査
Research Abstract

H25年度は新たな調査協力館(2館)を得られ、昨年度の協力館(1館)の視聴者データと合わせて、これまでの研究では試みられていない文理融合的観点による全天周映像の視聴特性、および全天周映像の特性である臨場感や没入感の観点から研究を進めた。協力3館は地域性、来館者層や投影施設(ドーム径、プロジェクターなど)も異なる。
文理融合的観点が映像の内容理解に及ぼす影響については、アンケートの自由記述欄にある感想や意見からキーワードを抽出した。キーワードには、人文もしくは自然的事象への関心、あるいは論理的思考や芸術的思考があり、年齢や全天周映像の視聴経験などにおいて特色が見られる。これらのキーワードと、年齢および視聴経験数との繋がりを統計学的手法に基づく散布図で表すなどして解析を進めている。
全天周映像の特性である臨場感や没入感については、全天周と、そうでない投影の比較において、臨場感や没入感を5段階評価する回答から分析できた。臨場感・没入感には、画像精細度のみならず、視聴者の心理的側面も作用すると考えられる。調査結果より、臨場感や没入感に影響する要因として、画像精細度とドーム径などの物理的要因、さらに全天周ドームでの過去の記憶や経験などの人的要因が認められたので、物理・環境要因(画像の立体視は除く)と、視聴者個人に関する人的要因の双方から臨場感・没入感を検討した。これら物理的要因と、来館者個人に関わる人的要因は複合的に絡み合っている傾向も見出せた。
以上の研究成果を博物館学や天文学の学会で発表した。発表に際し、双方の分野の関係者から本研究の新規性と独創性について評価を得られたと共に、全天周映像の視聴特性を見出す新たな調査指針も得られた。さらに、宇宙・天文分野に近接する分野で球形立体表示装置を開発している研究者と連携することで、全天周映像特有の臨場感・没入感の検討課題を更に具体化できた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究計画立案当初より、プロジェクター性能が著しく進化し、加えて、臨場感や没入感を高める手だてとして、4Kなどの高精細画像に関心が高まっている。しかし画像の高精細化は、高額なコストが掛ることから開発・導入が困難であることや、臨場感や没入感には来館者の心理的側面も作用することから、高精細が必ずしも効果的ではないとの見方もある。ゆえに、まずは現状の設備での臨場感や没入感の実態を捉えることも重要であると考えられるため、本研究では、従来の研究でなされていなかった来館者自身の経験や心理的側面により着目し、物理・環境、人的要因の相互観点から臨場感や没入感に与える影響について検討している。調査結果から、画像解像度だけが臨場感や没入感の要因でなく、ドーム径が、プラネタリウム経験の浅い一部の条件の視聴者に与える影響が大きいという新たな発見も得られている。この調査研究の着眼点と成果に対して、博物館学や天文学などの関係者から高い関心が寄せられている。以上の成果は、本研究のみならず、今後の全天周映像化の新たな検討課題につながるものでもある。
文理融合的観点が全天周映像の内容理解に及ぼす影響については、アンケートの自由記述欄にある意見から、年齢や視聴経験の差、視聴動機においてキーワードを抽出できるまでに至っている。研究計画書にも明記したように、筆者の松岡は、博物館学の分野において、展示を「見る」という条件下で、来館者の自由記述に見られる多様な特性を明確な基準で評価し、かつ評価で得られた特性を分かり易く視覚化できる方法を新たに取り入れた。この評価方法は本研究にも援用できると考えられるため、自由記述の分析においてもこの手法を照らし合わせつつ視聴特性を分析している。今後は、内容の理解度や満足度も含めた複合的観点からの分析も進める。
H25年度は新たな上映協力館も増えており、今後も協力館を募る活動を継続する。

Strategy for Future Research Activity

今年度は、全天周映像特有の臨場感や没入感に関与する物理・環境的要因と人的要因について、双方の相互関係から更に解析を進める。昨年度の調査から独自の新たな視点として、スクリーンのドーム径を加えることができた。ドームでは見た目の明るさが座席からの距離の二乗に反比例する性質もあり、これまでよりもドーム径が大きい館と小さい館で調査を行い、ドーム径の影響を分析する。また、独自の研究の視点でもある視聴者の心理的側面(過去の経験や記憶)にも着目して検討を行う。
文理融合的観点の及ぼす影響については、今年度の新たな協力館でも同様に実施する。新たな協力館はこれまでの館と物理・環境要因(投影施設や星空環境)が異なる。これまでの館で得られた自由記述意見のキーワードと照らし合わせ、物理・環境的要因(プロジェクター性能・ドーム径,地域性)、人的要因(理解度や満足度)の観点も含めた複合的観点からの検討を、筆者の松岡が博物館学の学びの分野において独自に立案した分析手法を引き続き用いて解析を行う。
全天周映像と同様に、視聴者に臨場感や没入感の効果を与えると予測されるものに、立体映像(3D)や4Kなどの高精細な映像がある。H25年度は、宇宙・天文分野に近接する分野で球形立体表示装置を開発している研究者と連携して全天周映像の臨場感・没入感を検討する観点も含めた協議を開始し、今後の研究内容を具体化できた。まずは、全天周ドーム内に球形立体表示装置を置き、双方のスクリーンを併用したプログラムを一般視聴者対象に試験的に実施し、効果を検討したい。
以上の研究成果については、博物館学、天文学関係の学会等で発表し、専門家と意見交換を行う。これらの調査分析に基づいて画像の加工や入れ替えを行って試験投影を行う。そして、本研究における全天周映像の構成要素となるドームマスターの連番画像を作成し、文理融合的観点からの全天周映像を作成する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度は、本研究の独自性でもある文理融合的手立てにおける全天周映像の効果、および、全天周特有の臨場感や没入感を決定づける要因の明確化の調査研究のために、引き続き新たな協力館にも赴いて調査を進めるための旅費が必要になった。また、全天周映像ならではの臨場感や没入感の特性をより明確化するために、立体映像や高精細な映像に関する研究者と情報交換して調査を進めるためにノート型PCとオフィスソフトが新たに必要となった。これらの調査を通して、本研究における全天周映像の構成要素となるドームマスターの連番画像について、臨場感・没入感を深める場面を特定し、画素値を高めるなどの加工を施すため、加工費および人件費を計上する。また、適宜、博物館学、天文学関係の学会等で発表し、専門家と意見交換のため学会への参加費と旅費が必要である。
次年度は全天周映像の効果、および、全天周特有の臨場感や没入感を決定づける要因の明確化の調査研究のために、協力館にも赴いて調査を進めるための旅費を計上する。調査においては、必要に応じてアルバイトを雇用して視聴者からの回答分析作業を進めるために、アルバイト謝金を計上する。さらに、調査に赴いた先での投影画像の検討のために使用するノート型PCとオフィスソフト購入経費を計上する。これらの調査を通して、本研究における全天周映像の構成要素となるドームマスターの連番画像について、臨場感・没入感を深める場面を特定し、画素値を高めるなどの加工を施すため、加工費および人件費を計上する。また、新たに加えると効果的と思われる画像について検討し、ドームマスターの連番画像を作成するための製作費および人件費を計上する。研究成果については、適宜、博物館学、天文学関係の学会等で発表のため参加費と旅費を計上する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2013 Other

All Journal Article (1 results) Presentation (2 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] 2-2外部資金による研究,科学研究費補助金による研究プロジェクト2013

    • Author(s)
      松岡葉月
    • Journal Title

      国立民族学博物館研究年報2012

      Volume: なし Pages: p267-268

  • [Presentation] ドーム型スクリーンに投影する天体画像への臨場感・没入感に関する研究

    • Author(s)
      松岡葉月,阪本成一,原秀夫, 水谷潔,渡辺真由子
    • Organizer
      日本天文学会2014年春季年会
    • Place of Presentation
      国際基督教大学
  • [Presentation] 博物館などの体験型映像システム「全天ドームスクリーン」における臨場感・没入感の研究-博物館体験における物理・社会・個人的コンテキストからの分析-

    • Author(s)
      松岡葉月,阪本成一,原秀夫, 水谷潔,渡辺真由子
    • Organizer
      全日本博物館学会第40回研究大会
    • Place of Presentation
      明治大学
  • [Remarks] 誰も知らなかった星座 -南米天の川の暗黒星雲-「上映情報」

    • URL

      http://www.isas.jaxa.jp/soukendai/planetarium/theater.html

URL: 

Published: 2015-05-28  

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