2012 Fiscal Year Research-status Report
社会貢献を目指す事業における女性の働き方とキャリア形成に関する研究
Project/Area Number |
24510385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 紀子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (40625117)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 社会貢献 / 女性労働 / キャリア形成 / NPO / ソーシャルビジネス |
Research Abstract |
科研費による研究の1年目である平成24年度は、主に先行研究の整理と日本と米国において聞き取り調査などを行った。 具体的には、第一に、先行研究から得られた知見、すなわち、組織の性質や活動の展開による働き方の違い、生涯という長い期間でみるキャリア形成の視点などを検討するとともに、ソーシャルビジネス、女性の働き方とキャリア形成に関する文献研究を行った。第二に、日本において、事業内容や組織形態、年齢、ライフステージなどが異なる様々なタイプの社会貢献を目的とする団体の女性リーダーや参加者に対して聞き取り調査を行い、事例の蓄積を図った。また第三に、実際にNPOによる活動が盛んな米国の実情について知るため、8月に米国のなかでもNPOによる活動が活発なサンフランシスコに行き、NPOの管理的立場に就いている7名の女性にヒアリング調査を実施するとともに資料収集を行った。さらに、2月には社会貢献を目的とする事業に関わる人や研究者が集う国際会議(バーバード社会起業大会)に参加すると同時に、女性が立ち上げて現在では米国の大学生の人気就職先となっている教育NPOをはじめ、NPOを支える様々な活動を展開する7団体を視察して米国のNPOに対する理解を深めた。 以上、平成24年度に行った研究は、①日本における先行研究の整理という文献を中心とする研究、②日本と米国において活動する人々や事業の背景などに関する調査研究、に大別できる。これらから、日本における先行研究では十分な検討が行われていない部分、本研究の意義や役割を認識するとともに、米国の事例の検討によって本研究の可能性(柔軟な働き方、組織間の移動を通じたキャリア形成のパターン)などを再考する際に重要な視点(社会の仕組みの違い)を理解することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、社会貢献を目指す事業を対象として、それに携わる女性の働き方の実情を探り、企業組織で昇進するキャリア形成とは異なる女性のキャリア形成の方法やプロセスを実証的に検証することである。 この研究目的を果たすためには、これまでの先行研究の検討は不可欠であり、従来の研究ではどういう視点が不足しているかということを明らかにしておく必要がある。概ね、これまでの研究で引用されることが多い主要文献についての検討は済んでいるものの、こうした社会貢献を目的とする事業が登場して着実に実績を上げるようになってきたのはここ10数年のことであり、女性の就労の場・キャリア形成の場という視点からとらえ直して言及する研究はほとんどない。実際に事業を立ち上げた女性起業家が自伝として語る文献が多い状況である。そのため、こうした文献で明らかになる個別の状況もフォローしながら、研究論文としての在り方などを検討している段階である。 一方、近年の現状を具体的に知るには、文献に頼るだけではなく、実際にNPOなどで社会貢献事業に携わり収入を得ている女性を対象とした丹念な調査が欠かせない。特に、米国における聞き取り調査によって様々な働き方やキャリア形成のパターンを知ることができたのは、今後の研究を進めるうえで大きな力となった。また、米国の先進的なNPOの様子を見学できたことは、事業を展開していく際に重要なポイントを知る機会となった。もっとも、日本と米国では社会の仕組みなどが違うことから、米国の事例が日本でもすぐに当てはまるということは難しいけれども、こうした成果は、平成25年度に行うアンケート調査の質問票の設計などの際に、大いに参考になると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
【先行研究の整理、聞き取り調査の実施】 平成24年度に続き、先行研究の整理や最新の研究動向のチェック、聞き取り調査を行っていく。その際、これまでの研究をふまえ、①日本において社会貢献を目的とする事業を行う団体(NPOなど)と企業に勤務する女性の働き方とキャリア形成についての比較検討、②日本と諸外国(米国が中心)の社会貢献事業を行う団体における女性の柔軟な働き方とキャリア形成の比較検討、を軸にして進めていく。また、平成25年度は、そうした研究の成果を学会報告や論文投稿の形で外部に発信して、様々な方々から助言や批判をいただくことによって、研究の質と精度を向上させていく。 【アンケート調査の準備と実施】 平成24年度に行った研究の成果をふまえ、アンケート調査の準備を本格化させる。具体的には、調査内容や質問項目、調査対象者などを想定して、調査票の設計案を検討するとともに、調査対象先のリストアップや調査協力者(大学院生のアルバイトを予定)の依頼など、準備作業に着手する。そして、調査票の作成、調査票配布先リストの作成、印刷・発送・回収・データ入力などの作業の実施方法の検討と決定を行い、平成25年度の後半にはアンケート調査を実施できるようにする。 【研究遂行上の課題など】 平成25年度から所属が変わり、新しい環境で研究を行うこととなる。従来とは様々な点で勝手が異なることが予想され、当初の予定通りに研究を進めることができるのかという点が課題である。状況によっては、研究計画の修正や研究期間の延長も視野に入れて、柔軟に研究環境の変化に対応しつつ、研究を着実に達成できるよう努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はアンケート調査を実施するため、人件費や謝金の割合が高くなっている。現時点では、アンケート調査の規模や詳細は決定していないものの、調査票の発送・回収やデータ入力などを応募者1人で行うことは難しく、研究協力者に協力を依頼する必要がある。状況によっては、NPOの支援団体など専門知識や特定領域のネットワークなどを有する研究協力者とも連携を図ることも想定する必要がある。 加えて、アンケート調査の費用として消耗品や通信費(切手代)への配分を高めにしているほか、アンケート調査の集計用ソフト(SPSS)の購入も検討している。 このほか、引き続き、文献調査や国内の聞き取り調査も行うため、設備備品費、国内旅費も計上している。
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Research Products
(1 results)