2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520172
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
渋谷 哲也 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (90438789)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ドイツ映画 |
Research Abstract |
研究初年度である平成24年度は、これまで行ってきた研究の延長線上で題材を取り上げ考察を深めてきた。その成果は主に講演によって発表している。具体的にはライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの映画作品における文学脚色の方法論の考察であり、これはアテネ・フランセ文化センターで行われた映画『あやつり糸の世界』の日本初公開に際して、同センターホールでファスビンダーを中心としたニュージャーマンシネマにおける脚色映画についての講演及び討論会を行ったものである。討論会のゲストは映画研究者の堀潤之氏であり、彼の広範な理論的知見とフランス映画への深い造詣ゆえにドイツ映画という研究対象を多面的に討議できる機会となった。この模様は録画しており、近日中に映画の引用上映部分を削除したうえで映像アーカイヴとしてネット上で公開する。また研究論文として公表するべく、準備を行う。 また研究対象についての資料収集のために2月にドイツ滞在した。そこで25年度に日本上映を計画しているレナーテ・ザミ監督へのインタヴューも行った。彼女の映画は文学的テクストを重視し、言葉と映像表現の対位法を重視する監督であるため、ブレヒトやストローブ=ユイレの伝統において研究する意義の大きい作家である。彼女の映画の日本導入のための予備考察を行っているところである。 それ以外の活動としては、ドイツの未公開映画の上映や紹介の活動を通じて、映像とテクストの関係性を複数の映像作家において検証した。主にハンス=ユルゲン・ジーバーベルク監督のドイツ3部作と、ヴェルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリー映画を詳細に検証する機会にも恵まれ、これらの研究成果は25年度以降に研究論文として発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心的な課題は2つある。そのうちの一つはジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ監督のドイツ語圏の映画を取り上げ、そこでのテクストと映像の関係性をメディア美学的に考察し、また原作小説を脚色する際の手法についてテクスト批評に囚われない広い視野で考察を進め、その成果を単著として公表することである。このための作品分析考察や執筆作業は25年度以降に本格的に取り組むことを予定しており、現在のところはストローブ=ユイレと関連の深い映画作家すなわちファスビンダーやジーバーベルクの諸作を主に扱ってきた。こうした周辺的な考察も著書の1部に取り入れる予定である。 また戦後ドイツ映画史、とりわけニューシネマの歴史を幅広い視野で再検証することも課題であり、それについては様々な研究論文等の検討や、これまで未見の関連映画の鑑賞などを進めている。またストローブ=ユイレの映画への言及の多いドゥルーズの『シネマ』など現代映画についての刺激的な理論的考察についても考察を深めている。 また本研究2つ目の課題として、日本では無名だがきわめて重要なドイツの映画監督の作品を日本に紹介し、考察する試みも進めている。25年度はレナーテ・ザミの作品の日本公開を行うため、その準備としてザミ監督に取材を重ね、上映作品の決定や字幕作業などにも少しづつ着手している。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度は、これまでのストローブ=ユイレについての内外の研究を再検証し、その成果を文章化する。まずは学術誌等への研究論文として公表すること、そしてかつて公表した論文や映画解説や批評等に加筆修正を加えつつ、ストローブ=ユイレについての単なる映画ファン的なアプローチにとどまらない社会批判やメディア論的な視座も含めた研究書にまとめてゆく。またそれと並行してこれまで取り組んできたファスビンダー映画について学会発表や雑誌論文の形で公表してゆく。新たな資料収集も必要となるため、一度のドイツ滞在を予定している。 レナーテ・ザミ監督作の日本初上映については、すでに公開作もほぼ決定している。26年3月の開催をめどに、今後は字幕版作製と作品と作家についての導入を行うべく準備を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
26年度は、ストローブ=ユイレとファスビンダーについての研究成果をまとめた研究書の出版に向けての作業に集中する予定である。研究費の大半は出版補助に充て、その他副次的な資料収集のために書籍や映像資料の購入、および一度のドイツ滞在を予定している。
|
Research Products
(2 results)