2013 Fiscal Year Research-status Report
近世琉球和文学の考究および沖縄版「伝統的な言語文化」としての教材化
| Project/Area Number |
24520220
|
|---|
| Research Institution | University of the Ryukyus |
|---|
Principal Investigator |
萩野 敦子 琉球大学, 教育学部, 教授 (90343376)
|
|---|
| Keywords | 伝統的な言語文化 / 地域の文学 / 近世琉球の文学 / 平敷屋朝敏 |
|---|
| Research Abstract |
平成25年度は、下記３件において研究成果を公表した。
１）溪水社より平成26年２月28日に刊行された『沖縄から考える「伝統的な言語文化」の学び論』において第一章「「伝統的な言語文化」と地域―国語教科書の実際と沖縄における学びの可能性―」を執筆し、現行の国語科学習指導要領において地域における「伝統的な言語文化」がいかに意識され、またそれは各社から出版されている国語教科書（主として小学校）にいかに教材として反映しているかを分析した。そのうえで、地域独特の言語文化を有する沖縄における国語科教師たちの取り組みについて具体例を紹介した。なお本書は、村上呂里氏と報告者の共編著である。
２）平成25年７月に発刊された『日本文学』62巻７号において「〈読む〉和琉彩彩・平敷屋朝敏『貧家記』の世界」を発表、従来指摘されてきた『土佐日記』や『伊勢物語』のほかに、この作品には『源氏物語』の幻巻の叙述スタイルが投影していることに言及した。
３）上述２は依頼原稿であり紙幅が限られていたため、その論旨に具体的な論証を付けていくかたちで、平成25年９月14・15日に熊本大学内で開催された第63回西日本国語国文学会において、「平敷屋朝敏『貧家記』の〈擬古〉」という題目で研究発表を行った。ここでは、あらためて本作品の全体像とヤマトの和文学からの影響について確認したうえで、平敷屋朝敏が『源氏物語』幻巻の叙述にまなびながら、その書き方を通して心象を表現する術を体得し、それを作品に反映させていることを述べた。ヤマトに生まれた偉大な物語文学の表現性を消化吸収し、みずからが創り出す物語の世界を豊かにしようとした朝敏の文学的営為について述べた。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究にかけられる時間が限られた。平成25年度、報告者は、四つの学内委員を務めたが、うち研究推進戦略室委員、男女共同参画室委員については、大学の現在の評価と将来に関わる重要度の高い委員である。また学部内においては、学部運営会議の構成員となり、現在の学部運営と「ミッションの再定義」に関わる学部の将来構想を具体的に考える役割を担った。後者においては、数度の学部内勉強会において実質的な企画者としての役割をも果たしている。同時に学部においては、地域貢献のかかわって、沖縄県より委託を受けた「学力向上先進地域育成事業」において浦添市と中城村の取り組みの中核を担い、小中学校の現場に断続的に足を運んだほか、本学部が連携協働しつづけている石垣市の公立中学校との共同研究においてもスタッフとして活動した。もとよりこれらの活動によって割かれた物理的な時間の影響を学生の教育の及ぼすわけにはいかず、研究時間は非常に限られるものとなった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
校務・公務の多忙さによる研究時間の欠如さえ克服できるならば、今年度は下記の研究を推進する予定である。
・平敷屋朝敏の四つの擬古文物語のうち、『貧家記』について研究成果を（口頭発表したものをさらに充実発展させて）研究論文としておおやけにすること。
・同じく平敷屋朝敏の『苔の下』について、注釈を付け、その研究成果を口頭発表ないし研究論文としておおやけにすること。
・地域における「伝統的な言語文化」の学びについて考えるため、国語教科書の教材についてさらに分析を進めること。（小学校についてはすでに研究成果をおおやけにしているので、今年度は中学校について分析を進める。）
|
| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は校務・公務が繁忙だったため（その内容については先に記した）、研究計画どおりに研究が進まず、科研費を十分に使用する機会がなかったため。
今年度は円滑な研究のためにパソコンの購入と、研究成果を公表するための学会出張を考えている。
|
Research Products
(4 results)
