2012 Fiscal Year Research-status Report
直示と指示・照応の面から見たドイツ語指示表現の研究
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24520470
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 光演 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (90182790)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 意味論 / 直示表現 / 対照言語学 |
Research Abstract |
先行研究におけるドイツ語の直示表現の分析(Buehler 1934, Zifonun et al. 1997, Duden 2005, Helbig/Buscha 2005等) を検討し、それらの問題点(定義、用法、機能)を抽出した。特に、前域(文頭)に現れる指示代名詞der/das/dieおよびdieser(英語対応)の機能(代名詞との相違)についてWebデータ、コーパスを収集して分析し、タイプ分類した。次に、日本語指示詞の先行研究(金水・田窪等)の検討を開始し、日本語とドイツ語の直示と照応表現を比較した(日本語の「コソア」の三項対立と直示・照応の分類)。これらの分析の中間的結果については、2012年8月18-19日にミュンヘン大学で開催されたドイツ語・日本語ワークショップ(Arbeitstagung Japan-Muenchen LMU August 18-19. 2012)で、"Japanische Demonstrativpronomina: dreiteilig oder zweiteilig?"というテーマで発表し、Leiss教授, Abraham教授らと意見交換した。 また、2011年11月10日に広島大学で開催された日本独文学会61回中国四国支部研究発表会で「現代ドイツ語における指示代名詞 der の特徴」というテーマで発表した(現在、論文投稿中)。 2013年2月5-7日にはオランダ・ユトレヒト大学(de Swart教授の「弱定名詞句プロジェクト」)、ドイツ・ケルン大学(指示意味論を研究するHeusinger教授)を訪問して、日本語・英語・ドイツ語の直示表現の研究方法・分析に関して意見交換を行い、直示と照応表現に関する言語比較の問題について議論し、今後の共同研究の可能性について確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年8月18-19日にミュンヘン大学で開催されたドイツ語・日本語ワークショップ(Arbeitstagung Japan-Muenchen LMU 18.-19. Aug. 2012)で、"Japanische Demonstrativpronomina: dreiteilig oder zweiteilig?"というテーマ(日本語の直示表現の分析方法)で発表し、これについて、E.Leiss教授, W. Abraham教授らと意見交換し、生産的議論ができた。これをさらに、研究論文としてまとめていく予定である。 また、2011年11月10日に広島大学で開催された日本独文学会61回中国四国支部研究発表会で「現代ドイツ語における指示代名詞 der の特徴について」というテーマで、指示表現derの多様性について発表した(現在論文として作成し、投稿中である)。 文構造とその意味という、ドイツ語疑問文の文ムード意味分析を行い、2012年5月の日本独文学会のシンポジウムにおいて研究発表を行った。直示表現との関係は語用論上の大きな枠組みにおいて幅広く関連している。これについては2013年5月に論文として公表される。 データのうち、アンケート調査については24年度は時間的制約があり、実施できなかったが、25年度には(場所・人数等については調整しつつ)実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に沿って、ドイツ語・英語・日本語等の指示表現に関連する研究をさらに推進する。具体的には、ドイツ語の先行研究における直示・指示・照応表現の分析を批判的に検討し、先行研究の問題を抽出する。特に、直示表現の格の相違(der/ den)、文脈指示における照応機能や、想起用法についても着目して理論研究を進める。 上記に沿って、機能分類したものをアンケートとして作成し、ドイツに赴きインフォーマント調査を実施し、結果を分析し、まとめる。 これと並行して先行研究や辞書の例文、コーパスなどを集めて整理して分析する。特に、会話文・戯曲、小説、新聞・雑誌などテクスト種類による用例の頻度の分析に重点を置く。 ドイツ語指示詞(dieser, jener, der/das/die )と英語指示詞(this, that)、日本語指示詞(「これ、それ、あれ、こいつ、あいつ」等)の対照を行う。話し手と聞き手の領域間の<縄張り>の対立と、話し手・聞き手領域と、それ以外の領域間の<縄張り>の対立の問題などでは日本語が3項要素をもち、役割分担が比較的明確化しているが、英語では2項(this=「これ」, that=「それ」「あれ」対応)となり、ドイツ語では2項対応が明示的でないように見えるが、それが具体的にどのようにコード化されるのか(dieser vs. jenerの対立が直示=外界指示では出てこない。その代わりにder/das/die N daのような場所副詞が付加される)といった問題を理論的・実証的に分析し、論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最新の研究について文献をさらに収集し,分析を深める(設備備品)。次に、24年度・25年度の調査結果を整理・分類して,資料としてまとめる(謝金:研究補助)。 得られた研究成果を国際学会、国内学会等で研究発表し、研究論文としてまとめ、学会誌に投稿する(旅費:国内旅費,外国旅費)。 これらの知見をドイツ語学習に応用する方策について具体化する(適切な用例データとしてまとめ、指導レベルでもマニュアル化し、論文に収めて、ホームページにも公開する)。(ホームページ作成、資料作成)
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Research Products
(5 results)