2012 Fiscal Year Research-status Report
日本人のための英語ライティングセンター構築の可能性とその実現計画
Project/Area Number |
24520717
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
木村 友保 名古屋外国語大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30329867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄大 名古屋大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20547038)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(カナダ / 国際情報交換(米国・英国・スペイン) |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在日本に存在するライティングセンターの現状を調査し、調査報告をまとめ、分析し、問題点を浮き彫りにして、最終的には、日本人のための、多くの日本人の英語学習過程を最大限に生かす「ライティングセンター」の構築の可能性とその実現計画をたてることにある。 そのために、平成24年度は国内7大学、および米国の3大学訪問によって、その実態を調査した。国内は大阪女学院大学、東京大学、上智大学、早稲田大学、津田塾大学、秋田国際教養大学および政策研究大学院大学を訪問し、それぞれの大学の丁寧な説明を受けた。また、米国では、まだ調査が始まってもいない段階での「研究発表申請」であったためSymposium of Second Language Writingでの発表は実現しなかったが、研究分担者の佐藤がその学会に出席し、インディアナ州のマリアン大学およびインディアナポリス大学、さらにニューヨークではペース大学のライティングセンターを訪問できた。そして、研究代表者が所属する名古屋外国語大学の現代国際学部の研究紀要に「日本のライティングセンター調査ー日本人のための英語ライティングセンター構築の可能性ー」という調査結果を記した。 米国、日本問わず、ライティングセンターの使命は、作文それ自体を添削するのではなく、書き手がより良い作文が書けるように指導することであった。津田塾での指導は英語のライティング指導ではなく、日本語のライティング指導が中心であるが、基本方針は文章の添削でなく、より良い文章を書く助言であった。早稲田大学の担当者が語っていたように、日本のライティングセンターは、まだ米国のライティングセンターに倣っている段階のようである。 海外のライティングセンターは今後も参考にはなるが、日本人のためのライティングセンターはやはり日本人の学生の実態把握に基づくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的で明示されているように、日本にある9つのライティングセンター訪問が平成24年度の計画に入っていたが、調査の結果、北海道大学は担当者が名古屋大学に移籍していたため、現在は活動が中断していた。この事実でまず言えることは、現在のライティングセンターは担当者がいない場合は存在も危ぶまれる脆弱さを持っていることである。そしてその担当者の移籍先の名古屋大学への訪問は、平成24年度まで佐藤が職員としていたこともあって、平成25年度に調査予定である。そのほかの7つ、東京大学、早稲田大学、上智大学、津田塾大学、大阪女学院大学、秋田国際教養大学および政策研究大学院大学への訪問、聞き取り調査は終えることができた。どの大学への訪問でも共通した内容の聞き取り調査ができるように「調査用紙」を作成し、臨んだ。 それぞれの大学へはライティング研究会のメンバーで2人または3人で訪問し、1人がインタビューを行い、他のものは録音をし、訪問後、調査報告を研究会に行い、それをまとめて、名古屋外国語大学現代国際学部の研究紀要に「調査報告」として記載された。 米国で行われたSymposium of Second Language Writingへの参加は、「研究発表」で応募したが、結果は「不採用」であった。おそらく、応募者が多かったこと、本研究の調査前の申請だったためであったと推測する。しかし、研究分担者の佐藤は同シンポジウムへ参加をし、帰国前に米国の3つの大学を訪問し、ライティングセンターでの聞き取り調査を行った。 研究会ではライティングセンター構築のための理論的基盤をさぐるために、計画通り、以下の2冊の研究書を輪読、発表している。The Psychology of Written CompositionとMotivating Students to Learn。前書は2章まで、後書は1章までの発表が終わった。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに記したように、日本のライティングセンターの実態調査はほぼ終了している。今後は、その調査結果をふまえ、それぞれのセンターの特徴と問題点を浮き彫りにし、研究代表者および研究分担者が所属する名古屋外国語大学に「ライティングセンター」を設立するとしたら、どんなビジョンをかかげ、どんな学生を対象に開設するかを熟慮したい。そのためには、この大学でのライティング指導から得られる実態調査(調査のための授業を考えるのではなく、実際の学生のライティングの質を高めるための工夫をしていく中で、ありのままのデータを取る予定)を行う。 幸いにも、研究代表者は新入生45名、研究分担者は105名に対して、同じテキストを使い、ライティング指導を行う。そこで得られるデータ分析と理論研究で研究論文を書くことを計画している。さらに、その論文の裏付け資料として、同大学で教える非常勤講師の1人もライティング研究会のメンバーであり、本研究の研究協力者である。この協力者のライティング指導から得られるデータも参考にしたい。他2人の協力者は高校でライティング指導を行う。以上5人の研究者であり、教授者であるものの実際の授業から得られる資料を参考に、隔月1回の研究会で研究協議を重ねていく予定である。 平成25年度の研究活動として、外国語として英語を学ぶ国スペインおよび英語を母語とする英国でのライティングセンター(あれば、どんな学生が対象か)の調査を考えている。さらに、The Psychology of Written Compositionの著者であるCarl BereiterとMarlene Scardamaliaに直接会って、ライティングについて、またライティングセンター開設のご意見を聞いてみたい。お二人ともすでに高齢なので、ライティング研究会のメンバーが実際にカナダ・トロントに赴いて、ご意見を拝聴することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用は、主に二つの研究発表を考えている。一つは、大学英語教育学会(京都)でのシンポジウムで、すでに発表が許されている。ライティング研究会のメンバー4人が発表するので、そのための旅費と宿泊代である。もう一つは中国での発表で、平成24年度は応募したが、不採択であったため、今年はライティングセンター訪問の調査を終え、その分析および研究基盤も肉付けして、中国におけるSymposium of Second Language Writingでの発表に挑戦したい。その学会への参加費、旅費、宿泊代である。研究会のメンバー2人で参加予定。 さらに、スペインおよび英国でのライティングセンター訪問および調査にかかる旅費、宿泊代。そしてカナダ・トロントへの訪問にかかる旅費と宿泊代である。
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