2013 Fiscal Year Research-status Report
日本人のための英語ライティングセンター構築の可能性とその実現計画
Project/Area Number |
24520717
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
木村 友保 名古屋外国語大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30329867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄大 名古屋外国語大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20547038)
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Keywords | 第二言語ライティング / 日本のライティングセンター / 米国のライティングセンター / 日本人のためのライティングセンター |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在日本に存在するライティングセンターの現状を調査・分析し、その問題点を浮き彫りにして、日本人のための「ライティングセンター」構築の提案をすることである。 平成25年度は、昨年度訪問インタビュー調査を行った国内の大学(大阪女学院大学、東京大学、上智大学、政策研究大学大学院大学、津田塾大学、国際教養大学、早稲田大学)と米国の大学(インディアナポリス大学、マリアン大学、ペース大学)の調査結果を分析し、現状と問題点をまとめ、JACET第52回国際大会(京都大学)で「日本人のための英語ライティングセンター構築の可能性:訪問調査分析」を発表した。さらに第二言語ライティングの国際大会Symposium on Second Language Writing 2013(中国山東省済南市の山東大学)でPresent Situations of Writing Centers in Japanを発表した。 ライティングセンター研究の一部となるさまざまなライティング指導に関する研究も、ライティングセンター調査分析研究と同時に行った。佐藤が第29回JACET中部支部大会(岐阜聖徳学園)で「対話がライティングプロダクトに与える影響」を口頭発表した。論文では『現代社会と英語ー英語の多様性を見つめて』(平成26年3月発行)に木村の「大村はまと英語の授業」、佐藤の「学習者ライティング・プロセスへの介入・支援についてー認知的ライティング・プロセス研究に基づいてー」が所収され、また名古屋外国語大学『現代国際学部紀要』第10号に木村の”Omura Hama and English Lessons”と佐藤の"Developmentof cognitive writing process studies (1):Early research history of Janet Emig"が所収された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の国内・国外大学のライティングセンター訪問調査の分析を終え、現状と問題点が明確になってきた。現状として、多くの大学で、大学院生・非常勤講師がチューターとして直接大学生のライティング指導にあたっていること、その指導は添削が中心ではなく、学生を書き手として育てることに重点が置かれていること、そしてそういった指導が学生に対して効果的に働いていることを多くのライティングセンターのディレクターが感じている点が挙げられる。しかし問題点もさまざまあり、特にライティングセンターの存在・方針などを学生・センター以外の教員が理解していなかったり、特定の学生の利用が目立ち、大学全体の機関として十分機能が発揮されていないということが多くのセンターで共通にみられる問題点であった。 チューターと学習者のライティング指導を通したやりとりは上記のように効果をあげているものと考えられているが、あくまでも経験則であり、このやりとり自体の研究は少ないのが現状である。そのため、現状のライティングセンターでは、まだ担当するディレクターの指導であるとか、チューター個人の力量によってチューターリングの効果が左右される傾向は否定できない。私たちが日本国内の多くの大学で効果を上げるライティングセンターを提案するには、このチューター指導の研究は重要な要因であり、研究をすすめなければならない点であることも分かってきた。 以上述べたことを理論的に補充するため、チューター指導について佐渡島沙織・太田裕子編(2013)『文章チュータリングの理念と実践』、ライティングそのものについてBereiter & Scardamalia(1987) The Psychologoy of Written Compositionを文献として研究し、またライティングと相互作用ということについては、ヴィゴツキー心理学の研究を継続的に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までの調査と分析をへて、現在のライティングセンターの特色と問題点が明らかになってきた。本研究の完成年度となる平成26年度は、これらの特色と問題点を踏まえて日本人のための英語ライティングセンターの構築に対する提案を行っていきたいと考えている。できるだけ多くの大学で実施できるような提案を考えていきたいと考えているが、当初の研究計画で述べているように具体例として研究代表者・分担者が所属する名古屋外国語大学での設立・運営を中心に考えていきたい。 この提案は、研究代表者・分担者および協力者で検討を重ね、その暫定的な提案を第30回JACET中部支部大会(椙山女学園大学)で発表したいと考えている。その大会で発表できれば、多くの大学英語教育関係者に、私たちの考えを聞いてもらうことができ、また意見をうかがうことができる。さらにそうした質問、意見を踏まえ、私たちの提案をより実現可能なものとして、できれば国際第二言語ライティング学会のSymposium on Second Language Writing 2014(米国アリゾナ州立大学)で発表したいと考えている。この学会では、北米・アジア地区のライティング研究者が多く参加するため、私たちの提案をその俎上にあげ、質問や意見をもらうことで、より効果的で実現可能なものにすることができると考える。 また、そうした提案をまとめた論文をJACET中部の支部紀要あるいはJACET Journalなどの研究紀要へ応募し、3年間の研究成果を他大学と共有できるようにしたい。 同時に行っているライティング研究に関連して、ライティングと相互作用の研究を深める上で、第53回JACET国際大会(広島市立大学)においてシンポジウム「英語教育・研究における社会文化的アプローチーヴィゴツキー発達心理学に焦点を当てー」の開催が許されたので、ヴィゴツキー研究も深めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた国際的な学会参加および学会発表ができなかったこと、 さらに調査もできていない。最大の理由は、研究代表者の家庭に要介護者が 出たからである。 最終年度は、研究分担者および、研究協力者にも積極的に国際的な学会(米国アリゾナ大学)に参加してもらう予定である。また研究代表者も当初の計画通り、イギリスを始めとするライティングセンターの調査を行う予定である。さらに、研究者全員の願いである参考図書の著者二人(カナダ人)を直接訪問してインタビューする予定である。最後は研究報告書の出版を考えている。
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