2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550117
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 貴洋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50335197)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 不斉合成 / ロジウム / 触媒 / アリール化 / イミン / 不斉4置換炭素 / アミン / 付加反応 |
Research Abstract |
炭素原子に水素以外の異なる置換基を持つsp3不斉炭素中心をエナンチオ選択的に構築することは,天然物や医薬合成における重要な基礎反応の一つであり,有機合成化学における挑戦すべき課題である.本研究では,一般的に合成が困難とされている水素以外の4つの異なる置換基を持つ不斉炭素中心を効率的かつ立体選択的に構築する反応系の開発を目的として研究を行った.今年度は,トリアリールメチルアミン類のエナンチオ選択的な合成反応の開発を主に行った.ロジウム/キラルジエン触媒存在下,アリール基で置換された環状N-スルホニルケチミンとアリールボロキシンを反応させるとアリール基のイミン部位への付加反応が効率よくかつ高いエナンチオ選択性で進行し,対応する環構造を持つトリアリールメチルアミンが得られた.本反応は,基質に含まれるアリール基とアリールボロキシンの組み合わせによって,様々な官能基を持つトリアリールメチルアミン類が合成できる.生成物の環構造は還元的に切断可能であり,鎖状のトリアリールメチルアミンへと変換できた.また,3-アリール-3-ヒドロキシイソインドリノンを類似のロジウム触媒系で反応させると,脱水反応によって生じたN-カルボニルイミンへのアリール化反応が進行し,対応するキラルなイソインドリノンが高い収率かつ高いエナンチオ選択性で得られた.さらに,ロジウム/キラルジエン触媒を用いたアルケニルスルホニル化合物の不斉アリール化反応が効率よく進行することを見つけた.この反応では,様々なアルケニルスルホン,スルホナートおよびスルホンアミドの不斉アリール化が可能であり,キラルなジアリール置換メチン炭素中心が触媒的に構築できる.また,イリジウム触媒を用いた環状N-スルホニルケチミンと1,3-ジエンとの[3 + 2]環化反応を開発し,スピロアミノインダン誘導体が高い収率および高い立体選択性で得られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り,複数のアリール基で置換された不斉炭素中心構築法の開発として,ケチミンへの不斉アリール化反応を達成し,それらの結果は学術誌に掲載された(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 5056; Angew. Chem., Int. Ed. 2013, 52, 1777).一方,アルケニルスルホニル化合物の不斉アリール化反応においても,2つのアリール基で置換された不斉炭素中心の立体選択的構築法を開発し,その結果も学術誌に掲載されている(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 9086).これらの報告のなかで,3-アリール-3-ヒドロキシイソインドリノンの不斉アリール化反応とアルケニルスルホニル化合物の不斉アリール化反応はSynfacts (Highlights in Current Synthetic Organic Chemistry)に紹介されており,特に後者はSynfacts of the monthとして選ばれ,高い評価を得ている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として,スルホニルケチミンの不斉アリール化反応を実用的な観点からさらに発展させる予定である.具体的には,環状スルファメートおよびスルファミドの不斉アリール化反応を行い,キラルアミノアルコール,ジアミン,アミノ酸誘導体の合成を行う.また,環状アルケニルスルホニル化合物の不斉アリール化によってトリアリールメチル第4級不斉炭素中心を触媒的に構築する反応を開発する.基質となるアリール置換環状アルケニルスルホニル化合物の新規合成ルートをすでに見つけており,合成した基質を用いて反応条件や配位子の探索によってアリール基をエナンチオ選択的に導入する手法を確立する.基盤となる反応系として,ロジウム/キラルジエン触媒を用いるが,必要に応じて新たな配位子開発にも取り組む予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析機器(NMR)の故障により計画に若干の遅れが生じ,データの取り直しが必要となったため,平成25年度への繰り越しを行った.化合物合成のための有機試薬や溶媒などの消耗品費として使用する予定である.
|