2012 Fiscal Year Research-status Report
味覚と嗅覚刺激による口腔顔面痛の変調機構の解明と臨床への応用
Project/Area Number |
24593053
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 裕 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (50323978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 憲司 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40242440)
照光 真 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60401767)
山村 健介 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90272822)
倉田 行伸 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20464018)
吉川 博之 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (20547575)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔顔面痛 / 慢性疼痛 / 味覚刺激 / 嗅覚刺激 / 疼痛変調機構 |
Research Abstract |
嗅覚と味覚による刺激が慢性痛患者の疼痛伝導・認識に影響を与え、疼痛を変調させる可能性がこれまでの報告で示唆されているが、現在まで詳細な研究は全くみられていないことから、まず本年度は、研究器材準備、資料収集に加えて、口腔顔面痛患者を対象として「匂いや味が疼痛を変調させるか」、を問診にて予備調査した。さらに口腔顔面痛患者の精神医学的病態を複数の心理テストを用いて調査した。調査対象は当科外来通院加療中の口腔顔面痛患者41名(男性2名、女性39名、平均年齢53.0±12.0歳)とし、心理テスト検査は、新潟大学歯学部倫理委員会の承認の上で実施した(新潟大学22-R34-11-03)。 対象疾患は、顎関節症12例、舌痛症11例、非定型顔面痛9例、末梢神経障害性疼痛9例で、心理テストは抑うつ不安を調査するHospital Anxiety and Depression Scale、心気傾向を調査するSomatosensory Amplification Scale、に加えて、精神疾患簡易構造化面接(The Mini-International Neuropsychiatric Interview)(M.I.N.I.)を用いた。その結果対象患者では有意に抑うつ・不安・心気傾向得点が高い症例は少なかったものの、M.I.N.Iによる調査では、23名(56.1%)において精神医学的診断が確定した。さらにそのうち身体表現性障害の診断名が確定した症例が12例と多く見られた。 一方、問診にて食事時に疼痛が消失すると回答した患者は、舌痛症の11例全例と、非定型顔面痛患者9名中4名にみられたが、その他の症例では食事による変化は判定出来ず、さらに匂いについても明らかな結果は得られなかった。しかし食事で疼痛が消失した患者のうち味覚刺激の違いによる疼痛の変動がある可能性を回答した症例も約半数にみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、健常成人実験的疼痛モデル作成準備、実験に使用する嗅覚刺激・味覚刺激用の試薬の調査・準備、および光脳機能イメージング装置N.I.R.S.、自律神経活動測定装置MemCalc Tonam2の調整に時間を有することは研究開始当初から予想されていた。したがって研究1年目に行う予定としていた健常成人による実験的疼痛モデルを用いた実験が十分には実施出来なかったのが本年度の反省点である。この点については次年度、早急に健常成人実験的疼痛モデルと口腔顔面痛患者の両者を対象として並行して実験を進めていく予定であるが、本年度はまず実験開始前の基礎データとして口腔顔面痛患者に対する複数の心理テストおよび精神疾患簡易構造化面接を用いた精神医学的調査によるデータ収集が実施でき、心理的な因子の修飾は慢性痛を有する患者には少なからず影響を与えていることが明らかになったことから、次年度以降はより詳細な精神医学的診査を並行して行い、最終的な実験結果と照らし合わせたうえで疼痛変調反応の判定をする必要があることが示唆された。さらに口腔顔面痛患者に対して問診した嗅覚・味覚刺激に対する予備調査が実施することが出来、特に舌痛症や非定型顔面痛では嗅覚や味覚に影響する「食事」という行為により疼痛は確実に消失するという事実が明らかになったのは有意義な結果であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
健常成人実験的疼痛モデルと口腔顔面痛患者を対象として、研究2年目は味覚、研究3年目は嗅覚を主体として、実験を進めていく予定である。実験によって測定する項目としては、まず精神医学的検査については研究1年目の結果を考慮し、現在の心理テスト内容から多少項目を増やし、さらに広い視野から心理面の調査が可能となるように変更の上実施する。また本年度に研究用に調整をした光脳機能イメージング装置N.I.R.S.と自律神経活動測定装置MemCalc Tonam2を用いて測定を開始し、測定結果から変化の見られた試薬の検査時には血液検査による内因性エンドルフィン測定も並行して実施する予定である。これらの結果から実際の味覚・嗅覚刺激の試験薬の種類による疼痛変調反応の有無についてさらなる研究を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
味覚・嗅覚刺激と疼痛変調機構の解明に関わる資料収集としての旅費・関連参考資料の購入に加え、実験に使用する電極や器具、味覚・嗅覚刺激の試薬などの消耗品、血液検査等の外注検査代、健常成人実験的疼痛モデルに対する謝金、データ収集用記録媒体費、などを主体に研究費を使用する予定としている。
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