2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720315
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
渡部 邦昭 九州歴史資料館, その他部局等, 研究員 (00615825)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地域交通 / 政党 / 軍部 / 鉄道 / 軌道 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦前期福岡県に存在した朝倉軌道・博多湾鉄道等の、政党や軍事輸送に関係のあった鉄道・軌道会社の経営状態解明を通して、戦前期の地域交通に対する政党・軍部の影響について明らかにすることである。これに基づき平成24年度においては、研究実施計画に基づき、主に研究対象となる鉄道・軌道会社の実態調査と、そのための資料状況の調査を行った。具体的には、福岡県内の自治体史、鉄道会社の社史を収集・閲覧し、各文献に記載されている朝倉軌道、博多湾鉄道等に関する記事を収集した。さらに、九州大学附属図書館付設記録資料館等に所蔵されている各鉄道・軌道会社の「営業報告書」を収集・複写する作業を実施している。これにより、研究の目的の第一段階である、朝倉軌道・博多湾鉄道等の経営状況解明の手がかりを得ることができるのではないかと考えている。 また研究実施計画のひとつとして、県内における鉄道・軌道関係資料の状況調査を挙げているが、これについては、うきは市立金子文夫資料展示館が所蔵する鉄道関係資料の調査を行い、資料の撮影等を行った。 さらに以上と並行して、九州歴史資料館が所蔵する、福岡県史編纂史料中の鉄道・政党・軍事関係資料の調査を行った。まず鉄道資料に関しては、県史編纂史料を総点検し、その中から鉄道に関する文献を確認・抽出して、簡易な目録を作成した。また九州歴史資料館が所蔵する、福岡県内の地図や駅舎の図面等についてのスキャニング作業も実施した。これにより、研究計画にある、九州歴史資料館が所蔵する鉄道・軌道資料のデータベース作成を達成した。一方、政党関係資料の調査については、福岡県出身の政治家、野田卯太郎の文書(県史編纂史料の一部)を調査し、その中の一部の資料については、翻刻の上『九州歴史資料館研究論集』第38号に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、当初の研究実施計画のとおり、主に研究対象となる朝倉軌道・博多湾鉄道等に関する自治体史、社史等の記事の調査と、各社の「営業報告書」の収集・複写を開始した。このうち、後者については、研究代表者の予定外の職務の発生などにより、開始時期が遅れた上、実際の作業期間も予定より時間を要したため、平成24年度中の完了が困難な状況となっている。そのため「営業報告書」等を用いた鉄道・軌道会社の経営状態把握を行うという平成24年度の計画に、一部遅れが生じ、その分は平成25年上半期に繰り越される見込みとなっている。 一方、この他に予定していた研究実施計画、特に自治体史、社史などに記載された記事の収集については、おおむね予定通り進行している。また九州歴史資料館が所蔵する資料の調査や目録の整理等も計画に即して行い、その成果の一部は『九州歴史資料館研究論集』第38号において発表している。 以上の状況を総合すると、平成24年度終了時の研究状況は、研究実施計画で策定した予定と比較すると、やや遅れが生じている状況といえる。ただし、研究実施計画において策定した、研究に遅れが生じた場合はまずは鉄道・軌道会社の経営状態解明を最優先の目的として行うという計画は、計画通り踏襲されている状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、平成24年度に着手していた「営業報告書」の収集・複写作業を継続するとともに、その内容を入力し、研究対象の鉄道・軌道会社の経営状況をより深く把握する予定である。それと並行して、福岡県立図書館等に所蔵されている『鉄道統計年報』等により、「営業報告書」では調査することのできない鉄道・軌道に関する情報を収集・入力してデータベース化する作業を行う。加えて国立公文書館、鉄道博物館などにおいて「営業報告書」以外の資料も収集・複写を行う予定である。以上の調査を通して、福岡県内の地域交通の経営状況、特にその中の軍事輸送による収入が経営に占めた比重を明らかにすることを目指す。 また鉄道・軌道会社の経営状態把握の他に、国立国会図書館憲政資料室等において、対象の鉄道・軌道会社の経営に関与した政治家(多田勇夫等)の資料、特に著作物や議会における発言等を調査する。 最終年度となる平成26年度においては、上記に加え防衛省防衛研修所において軍事関係の資料調査も行い、対象となる鉄道・軌道会社が軍事輸送においてどのような位置を占める存在であったのか、またそれに対して支払われた運賃がどのような交渉によって決定されたものであるのかを明らかにする。 その上で、以上の調査によって得られた成果を研究成果報告書にまとめるほか、『九州歴史資料館研究論集』等の学術雑誌に投稿し、発表する。また、この調査を通して得られた福岡県内の鉄道関係資料について、九州歴史資料館で展示を行い、研究成果のより一層の公開を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては、先に述べた研究状況の遅れ、特に「営業報告書」の収集・複写作業の期間の延長により、その内容の入力にまでは至らず、そのために予定していたパソコンおよびその関連機器の購入、また入力作業に従事するアルバイトへの人件費が執行されなかったため、研究費に残額が生じ、その額が平成25年度以降の研究費として繰り越されることとなった。そのため平成25年度においては、まずはこの作業を平成24年度の研究費の残額相当額で行い、それ以外の研究に関する経費は、平成25年度の研究費の予定額を使用して執行する予定である。 特に平成25年度においては、先に述べた国立国会図書館憲政資料室等、東京都に所在する機関での調査を行うため、研究代表者ならびに研究協力者等が複数回上京することを予定しており、そのための旅費、宿泊費等を計上している。また調査の過程において、関係資料の複写を相当数見込んでいるため、そのための複写費、郵送費なども計上している。 また平成25年度以降は、本年度の分も含めた調査成果の入力を行うアルバイトの雇用を予定しているため、そのための人件費・謝金等も計上する。
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