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2012 Fiscal Year Research-status Report

中学校数学で「未完成な証明」を生成する生徒の推論過程を改善する教授方略の研究

Research Project

Project/Area Number 24730722
Research InstitutionUtsunomiya University

Principal Investigator

牧野 智彦  宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (10450157)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2014-03-31
Keywords未完成な証明 / 架橋過程 / 認知的要因 / 思考パターン / 教授方略
Research Abstract

平成24年度の研究成果は,次の通りである.第一に,証明の構成過程における認知的側面を分析する視点を得た.具体的には,Heinzeら(2008)による研究から,証明の構成過程において「仮説的架橋」と「調整」が鍵であることが明らかになった.また,Boero(1999)の研究によれば,証明の構成過程では私的な側面と公的な側面があることがわかり,この点を分析の視点に組み入れることとした.また,Boero(2001)の研究における「予期的思考(anticipationary thiking)」の役割が明らかになり,「仮説的架橋」や「調整」を促進する上で「予期的思考」が重要な役割を果たす可能性があることを見出した.予期的思考については,Furinghetti & Morselli(2004, 2009)でも言及されていた.さらに,「仮説的架橋」の「仮説的」の意味を明らかにするために,認知心理学におけるEvans(2007)の「仮説的思考理論」の概念に整理した.
第二に,生徒による解答を分類する基準を設定し,生徒の解答を分類した.生徒の解答の分類は,「仮説的架橋」の観点「仮定から結論までどの程度繋げられているか」と「調整」の観点「推論の誤りや飛躍があるか」から行った.その結果,「架橋過程に成功,調整に失敗」タイプ,「架橋過程に失敗,調整に成功」タイプ,そして,「架橋過程と調整の両方に失敗」タイプを,「未完成な証明」のタイプとして特定した.
第三に,各タイプに属する中学生に対してインタビュー調査を実施した.その結果,推論IIIができなかった生徒は推論Iだけを行っていた.そして,推論IIIができている生徒は推論Iと推論IIの両方を行っていると同時に,「予期的思考」を利用していることがわかった.さらには,調整に失敗している生徒は証明の公的な側面への意識が欠落している可能性も示唆された.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

9月にインタビュー調査,10月には筆記調査,12月にはインタビュー調査を行った.今年度の後半は積極的にフィールドに出て,データを収集できた.そこでは,推論IIIができなかった生徒の認知的要因と思考パターンを探ろうとした.しかし,現段階では,推論IIIができない生徒の特徴は捉えられたが,その特徴をもった生徒が推論IIIができないかについては明らかになっていない.その意味で,認知的要因は特定できていない.同様に,ある特定の生徒の思考パターンは明らかになっているが,それがどの範囲まで一般化できるのかについては明らかにできていない.これらは,調査を計画する段階で想定していなかったことが原因である.
中学生の証明の構成過程を分析する枠組みを構築するために,多くの先行研究を分析してきた.しかし,現段階では,「未完成な証明」や「架橋過程」といった本研究のキーワードについての定義が曖昧であった.そのため,筆記調査やインタビュー調査の視点が定まらず,役立つデータがなかなか得られていない.

Strategy for Future Research Activity

「未完成な証明」は,現在,生徒の解答に見られる表層的特徴から規定している.中学生による認知的要因や思考の特質から,「未完成な証明」を定義する必要がある.また,「架橋過程」についても,他の類似な先行研究と比較し,本研究における「架橋過程」の特徴を見出し,定義する必要がある.そして,これらを踏まえた分析枠組みを構築し,その枠組みが機能するような調査を設計する.
未完成な証明を生成した生徒と証明を完成させた生徒の両方について,それぞれ認知的要因と思考パターンを明らかに志,比較検討する.その際,「未完成な証明」は多様に存在することが想定される.そこで,いくつかのタイプを選定し,そのタイプについて深く調査する.その際には,あるタイプの「未完成な証明」を生みだす生徒の認知的特徴を明らかにすることだけに留まらず,その認知的特徴をもった生徒は,そのタイプの「未完成な証明」を生成するのかまでも調べる.思考パターンについても,同じ手法で調べていく必要がある.
あるタイプの「未完成な証明」を選定し,それを生成した生徒が「架橋過程」を成功的に遂行できるようになる視点を探り,教授方略を考案する.

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

当該研究費が生じたのは,研究費執行が遅れたためである.今年度分の研究費はすでにすべて執行しており,納品も済んでいる.
したがって,25年度に請求する研究費は,当初の計画通りに進める.

  • Research Products

    (6 results)

All 2012 Other

All Journal Article (3 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] 中学生が生成する「未完成な証明」を特徴付ける観点について2012

    • Author(s)
      牧野智彦
    • Journal Title

      宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要

      Volume: 35巻 Pages: 293-298

  • [Journal Article] 中学校数学での証明の「架橋過程」における生徒の認知的困難2012

    • Author(s)
      牧野智彦
    • Journal Title

      日本科学教育学会研究会研究報告

      Volume: 第26巻第5号 Pages: 25-30

  • [Journal Article] 中学校数学での証明の「架橋過程」を妨げる認知的要因2012

    • Author(s)
      牧野智彦
    • Journal Title

      第45回数学教育論文発表会論文集

      Volume: 第2巻 Pages: 875-880

  • [Presentation] 中学校数学での証明の「架橋過程」を妨げる認知的要因2012

    • Author(s)
      牧野智彦
    • Organizer
      日本数学教育学会第45回数学教育論文発表会
    • Place of Presentation
      奈良教育大学
    • Year and Date
      20121110-20121111
  • [Presentation] Japanese students’ cognitive difficulty in bridging process to construct geometrical proof2012

    • Author(s)
      Tomohiko Makino
    • Organizer
      12th International Congress on Mathematical Education(Poster presentation)
    • Place of Presentation
      韓国,ソウル,COEX
    • Year and Date
      20120708-20120715
  • [Presentation] 中学校数学での証明の「架橋過程」における生徒の認知的困難

    • Author(s)
      牧野智彦
    • Organizer
      日本科学教育学会 日本科学教育学会研究会
    • Place of Presentation
      筑波大学

URL: 

Published: 2014-07-24  

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