2013 Fiscal Year Research-status Report
リン酸化プロテオームを用いたヘルペスウイルス病原性発現機構の網羅的解析
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24790434
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 哲久 東京大学, 医科学研究所, 助教 (40581187)
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Keywords | 単純ヘルペスウイルス / リン酸化プロテオーム / 神経病原性 / カプシド |
Research Abstract |
本研究は、(i) 高感度かつ信頼性の高いリン酸化プロテオーム解析により同定済みのHSVウイルス因子の各リン酸化部位の生物学的意義を解明すること、(ii) 新規に導入する定量的リン酸化プロテオーム解析により、ウイルスPKがハイジャックする宿主細胞因子のリン酸化制御を網羅的に同定すること、の2点を目標とした。 (i)に関する実績:昨年度の解析により、マウス病態モデルにおける病態発現への影響が認められたvdUTPase Ser-187のリン酸化およびVP26 Thr-111のリン酸化に関して、詳細に解析した。その結果、vdUTPaseの至適な酵素活性を司るvdUTPase Ser-187のリン酸化は、宿主dUTPaseの酵素活性の低い組織(Ex. 脳などの神経組織)におけるウイルス増殖に関与することが、培養細胞系およびマウスレベルの両者で明らかとなった。VP26 Thr-111のリン酸化は、VP26のプロテアソーム依存的な安定化に必要であり、解剖した組織由来のウイルス量を解析した昨年度、考えられた神経軸索の逆行性輸送(retrograde transport)ではなく、脳内におけるウイルス増殖の最適化に関与することが示唆された。 前半の知見は、昨年度、明らかになった知見とともに、国際学術誌であるJ.Virol.88:655-66.(2014)およびJ Virol. 88:2775-85.(2014)に報告した。後者の知見は、現在、論文作成中であり、本年度の国際ヘルペスウイルスワークショップにて報告する予定である。 (ii)に関しては、(i)に集中したため、記載に値する進捗はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 研究実績の概要に記載した通り、本研究は、(i) 高感度かつ信頼性の高いリン酸化プロテオーム解析により同定済みのHSVウイルス因子の各リン酸化部位の生物学的意義を解明すること、(ii) 新規に導入する定量的リン酸化プロテオーム解析により、ウイルスPKがハイジャックする宿主細胞因子のリン酸化制御を網羅的に同定すること、の2点を目標とし、前者に関しては当初の予想を大きく上回る結果が得られた、一方、後者に関しては、今年度は記載に値する進捗はなかったことから、全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。 特に(1)に関しては、研究実績の概要の記載通り、HSV疾患のアンメットメディカルニーズの一つであるヘルペス脳炎を司るユニークな分子機序を解明し、その創薬標的候補分子を提示することができた。本知見は、国際学術誌J. Virol.x 2報に報告できたことからも、当該分野において価値のある研究成果であったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
(今度の推進方策) (i) 本研究により明らかとなったHSV病態発現を司るVP26 Thr-111のリン酸化に関しては、さらに詳細な分子機序を解明することで、VP26の新規機能の解明に繋げていく予定である。 (ii) また、本年度、新たに見いだしたHSVの病原性を司る新規リン酸化部位2カ所に関しても、解析を継続して行く予定である。 (iii) なお、本研究の過程において、微量生体試料より、単純ヘルペスウイルス(HSV)のゲノムDNAを効率的に単利する手法の確立に至ったので、この点に関しても、継続解析していく予定である。 (i)および(ii)に関しては、新たに採択された基盤研究(C)にて、(iii)に関しては、補助期間の延長が認められた若手研究(B)にて、展開していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年11月末に、微量生体試料より、単純ヘルペスウイルス(HSV)のゲノムDNAを効率的に単利する手法の確立に至った。これは、本研究計画により見いだされたHSVの神経病原性の新規分子機構の解析の過程で確立された解析手法である。この解析手法は、本研究の目的の最終到達であるHSVの病態発現機構の解明を、当初の予想よりも一歩踏み込んだ脳内におけるHSVゲノムの遺伝的変動という水準で解析可能とした。そして、中間解析の結果、研究成果を飛躍的に高めるだけでなく、HSVのワクチン開発の重要な基盤構築に直結する可能性が示唆されている。したがって、本解析の完了は、当該研究分野の発展に対する革新的な寄与を期待される潜在的可能性を秘めていると思われる。本解析の全体の完了には10ヶ月を要するので、年度内の補助事業の完了が困難となった。 微量生体試料より、単純ヘルペスウイルスのゲノムにおける変異率をさらに解析するため、マウス代等に200,000円が、感度な遺伝子抽出に、80,000円が、その遺伝子配列の決定に250,000円が必要である。加えて、最新の研究動向の調査・研究成果の発表のため、旅費が、70,000円が必要である。
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[Journal Article] Long noncoding RNA NEAT1-dependent SFPQ relocation from promoter region to paraspeckle mediates IL8 expression upon immune stimuli.2014
Author(s)
K. Imamura, N. Imamachi, G. Akizuki, M. Kumakura, A. Kawaguchi, K. Nagata, A. Kato, Y. Kawaguchi, H. Sato, M. Yoneda, C. Kai, T. Yada, Y. Suzuki, T. Yamada, T. Ozawa, K. Kaneki, T. Inoue, M. Kobayashi, T. Kodama, Y. Wada, K. Sekimizu, N. Akimitsu.
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Journal Title
Molecular Cell
Volume: 53
Pages: 393-406
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Us3 kinase encoded by herpes simplex virus 1 mediates downregulation of cell surface major histocompatibility complex class I and evasion of CD8+ T cells.2013
Author(s)
T. Imai, N. Koyanagi, R. Ogawa, K. Shindo, T. Suenaga, A. Sato, J. Arii, A. Kato, H. Kiyono, H. Arase, and Y. Kawaguchi.
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Journal Title
PLoS One.
Volume: 8
Pages: e72050.
DOI
Peer Reviewed
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