2013 Fiscal Year Research-status Report
新生骨置換を促進するリン酸三カルシウム系セラミック材料の開発と評価
Project/Area Number |
25350554
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
橋本 和明 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90255159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオセラミックス / β型リン酸三カルシウム / 生体吸収性材料 / 生体必須元素 / 置換固溶体 |
Research Abstract |
現在,インプラント材料として骨吸収性を有して生体骨と早期に置換するセラミック系骨代替材料が注目されて,このような性質をもつものとしてβ型TCPセラミックスが位置づけられる。本申請のポイントは,生体の必須元素を用いてβ-TCPの新たな固溶体を形成させ,β-TCPの生体内崩壊性と材料強度とを制御し,インプラントとして使用する際に生体内で材料の再骨折や過大な吸収等が起こらない材料設計をすることである。初年度は,β-TCP 構造中のP位置(陰イオン位置)に各種酸素酸塩イオンを固溶させたβ-TCP焼結体の固溶と焼結メカニズムを明らかにし,材料物性を評価する。(1)Si固溶リン酸三カルシウム焼結体の調製と評価 β-TCP に骨形成を誘導する働きがあるSiを固溶させることを目的とした。作製したSi固溶β-TCPの1100 ℃焼結でSi添加量1~4 mol%において焼結体の機械的強度が高くなった。このようにβ-TCPの調製時に骨形成を誘導する働きがあるとされるSiをβ-TCP に2-4 mol%固溶させることで,生体骨の皮質骨と同等な100MPa程度の機械的な強度をもった焼結体がえられることを明らかにした。(2) V固溶リン酸三カルシウムの調製と評価 つぎにβ-TCPに細胞活性に影響するといわれているVを置換固溶させることを目的とした。V(バナジウム)の場合には異なる価数に変化し,三価のVはβ-TCPのCa位置と五価のVはP位置に同時に置換させることができることを明らかにした。(3) S固溶リン酸三カルシウムの調製と評価 さらにβ-TCPに生体必須元素で単発質合成に関与するとされているSをP位置に置換固溶させることを目的とした。S(硫黄)は,β-TCPのP位置に置換固溶できることを明らかにし,その固溶メカニズムをも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,β-TCP 構造中のP位置(陰イオン位置)に各種酸素酸塩イオン(SO4,SiO4およびVO4)を固溶させたβ-TCP焼結体の創製法(固溶と焼結メカニズム)の確立と材料物性を評価することを目的とした。 (1)Si固溶リン酸三カルシウム焼結体の調製と評価 β-TCP に骨形成を誘導する働きがあるSiを固溶させることを目的とした。β-TCPのP位置へのSiの置換固溶量と空孔へのナトリウム固溶による電荷補償を含めた置換メカニズムを明らかにした。また,焼結体の材料評価もある程度期待された機械的な強度をもった焼結体がえられることを明らかにした。(2) V固溶リン酸三カルシウムの調製と評価 β-TCPに細胞活性に影響するといわれているVを置換固溶させることを目的とした。このV(バナジウム)は,三価と五価となるためにβ-TCPのCa位置とP位置とに同時に置換し,その固溶メカニズムを明らかにした。また,焼結体の材料評価もある程度期待された機械的な強度をもった焼結体がえられることを明らかにした。(3) S固溶リン酸三カルシウムの調製と評価 β-TCPに生体必須元素して微量に含まれているSをP位置に置換固溶させることを目的とした。S(硫黄)は,β-TCPのP位置に置換固溶できることを明らかにし,その固溶メカニズムも明らかにした。 初年度で計画していたβ-TCP 構造中のP位置(陰イオン位置)にSO4イオン,SiO4イオンおよびVO4イオンを固溶させたβ-TCP焼結体を調製し,その材料物性を終えることができた。一方,生物学的評価では,いずれの試料とも細胞毒性評価は終え細胞毒性のないことを明らかにしたが,マウス等の細胞を用いたin vitro細胞評価については当初計画スケジュールにくらべて進行は少し遅い。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に検討した金属イオン固溶リン酸三カルシウムの実験結果を基にし,その焼結体の作製試料の大型化を図るために各種金属イオン固溶リン酸三カルシウムの焼結特性と焼結メカニズムを解明する。また,緻密質の焼結体以外に,一方向連通孔を有する多孔体を作製し,その気孔径や気孔率が材料の機械的強度に及ぼす影響を明らかにする。さらに単一組成のリン酸三カルシウムだけではなく,異種組成が混合されたセラミック/セラミック複合体を作製し,その物性を評価する。 一方,本申請研究で得られたβ-TCPセラミックスおよび金属イオン固溶β-TCPセラミックスについて,生体温度条件下で純水,生理食塩水,酢酸緩衝溶液,擬似体液(SBF)などの各種水溶液中に浸漬し,各種焼結材料の化学的な溶解性を評価する。また,マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞様細胞とマウスの骨髄より樹立したマクロファージ様細胞から分化した破骨細胞とを用いて,それらをセラミックス表面上に播種し,37℃, CO2雰囲気下で共培養できる評価条件を構築する。そして,骨芽細胞様細胞および破骨細胞の共培養下において,細胞接着や有走性,増殖の挙動を調べ,それぞれの細胞から産生されるALP活性およびTRAP活性を検討し,β-TCPセラミックスに固溶した金属イオンが及ぼす骨様細胞の影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請当初の物品費の見積額より安価に購入できたため 次年度に物品費として計上する予定
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Research Products
(7 results)