2013 Fiscal Year Research-status Report
水疱性角膜症に対する新しい角膜内皮移植術(DMEK)の確立と、術後視機能の解析
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25462705
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 顕 金沢大学, 医学系, 助教 (20303274)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 角膜内皮移植 / DMEK / DSAEK / 角膜移植 |
Research Abstract |
角膜内皮細胞が様々な原因で傷害されると、角膜が浮腫状に混濁して視力が極端に低下し、最終的に激しい痛みを伴う水疱性角膜症を発症する。これまでは「全層」角膜移植術が唯一の根治的手術療法であった。ただし、本術式は角膜全層切開に起因する眼球の脆弱性、縫合糸に関連した感染症、拒絶反応、高度角膜乱視、術中駆出性出血など様々なリスクを伴っている。近年、角膜内皮のみを交換する手術(角膜内皮移植術)が可能となり、様々な術式の改良を経て、現時点ではDSAEK(Descemet’s Stripping Automated Endothelial Keratoplasty)が水疱性角膜症に対する第一選択の手術術式として欧米を中心に行われている。ごく最近、デスメ膜と内皮細胞のみを移植する究極の角膜内皮移植術であるDMEK(Descemet’s Membrane Endothelial Keratoplasty)が提唱され、欧米のごく一部の術者の間で実験的に試みられている。ただし、この手術の難易度は極めて高く、一般眼科医が行うには、更なる技術革新と専用器具の開発が必要である。また、術後の詳細な視機能の評価や、術後角膜の組織学的な解析はまだ行われていない。今回の研究では、レーザー共焦点顕微鏡と前眼部光干渉断層計を用いたDMEK後角膜の超微細構造の詳細な生体解析(2次元および3次元構造)とその経時的変化の解析を行い、DMEK術後にはDSAEKと比較してドナーレシピエント層間の混濁が少ないことを見出し、それがDMEK術後の高視力に関係する可能性を見出した。さらに、デスメ膜の剥離を安定して行えるドナーパンチホルダーの開発に成功した。また、ドナーを接着させる際に微小な空気を前房内に注入する必要があるが、それを可能とする33ゲージカニューラの開発にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、DMEKを安全に行うための器具の作成に成功した。ひとつはデスメ膜の剥離を安定して行えるドナーパンチホルダーであり、もうひとつは、ドナーを接着させる際に微小な空気を前房内に注入するための33ゲージカニューラである。 また、レーザー共焦点顕微鏡と前眼部光干渉断層計を用いたDMEK後角膜の超微細構造の詳細な生体解析(2次元および3次元構造)とその経時的変化の解析を行い、DMEK術後にはDSAEKと比較してドナーレシピエント層間の混濁が少ないことを見出し、それがDMEK術後の高視力に関係する可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方向として、DMEK専用器具の更なる開発や、DMEK後の他覚的視機能の解析を予定している。具体的にはDMEK後患者、DSAEK後患者、nDSAEK後患者、全層移植後患者について、術後視力、角膜内皮細胞密度とその減少率、コントラスト感度測定、高次収差(オクルス社製前眼部解析装置ペンタカムを使用)、眼圧の測定を行い、他覚的な視機能検査を行う予定である。また、得られたデータについて、Statviewソフトウェアを用いた統計解析を行い、DMEK後患者とDSAEK/nDSAEK/全層角膜移植術後患者群間の視機能に差があるかどうかを評価する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に当該研究の成果を海外で発表するための旅費が必要なため、残しておく必要が生じたため。 2014年5月と10月に米国にて研究発表を行う予定があり、その際に旅費として使用する予定である。
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