2015 Fiscal Year Annual Research Report
感染伝達ダイナミクスを重視したインフルエンザ予報システムの開発
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25730181
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
齋藤 正也 統計数理研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 特任准教授 (00470047)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感染症数理モデル / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,感染症研究所が公開している定点観測データを参照して,インフルエンザの国内流行を予測するシステムの開発に取り組んできた.複数の地域の間で同期した流行のピークが見られることから,複数の地域にまたがる伝染を加味した非一様SIRモデルによる感染流行シミュレーションを検討した.このモデルでは,地域ごとに集団を感受性者(S: Susceptible),感染者(I: Infected),回復後免疫獲得者(R: Recovered)に分けてその人数変化を追跡するが,混合行列によって他県からの感染影響を取り入れられている.混合行列構成には,国土交通省による都道府県間流動表を用いた.各県の閉じた,すなわち県ごとの通常のSIRモデルと比較すると,感染者数の信頼区間は縮小できるものの,その平均値には大きな違いは見られなかった.当初想定した地域間の相互作用を取り入れることで,予測性能を向上することは難しいと結論づけられた. 感染症数理モデルの識者から,インフルエンザよりも伝染速度が遅い風しんでのモデリングを検討すればどうか,また地域拡散の原因として交通による感染者の移動をモデルに取り込むほうが適切ではないかという助言を得た.そこで,平成27年度は,2012/13年の風しん感染者数時系列を参照してのモデル再設計を行った.当該期間において例年と異なり感染者の指数関数的増大が確認され,力学的な流行モデルの構成には適切である.再構成したモデルによって,流行の特徴である大規模都市圏での集中的な感染者の発生が再現できることを確認できた.また,その際に実効再生産数は感染者数の増大フェーズでも1にきわめて近い値となった.これは血清陽性率調査からわかる感受性者割合と整合的であり,妥当な設定のもとで再構成モデルは2012/13流行を再現できる能力を持つと結論づけられる.
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Research Products
(4 results)