2013 Fiscal Year Research-status Report
イモリの遺伝集団間の複数の分布境界での生殖隔離の実態とその成立プロセスの検討
Project/Area Number |
25870572
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
富永 篤 琉球大学, 教育学部, 准教授 (60452968)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アカハライモリ / 生殖隔離 / 分類学的関係 / 交雑帯 / マイクロサテライト |
Research Abstract |
本年度のサンプリング収集は、東北地方の複数地点で行った。また、開発したマイクロサテライトマーカーを用いた多型解析を開始した。まず、ミトコンドリア(mt)DNAに基づく系統解析で明らかになったアカハライモリの4集団のうち、中国地方で分布を接する中部日本系統(集団)と西日本系統(集団)の分布境界での両者の遺伝的関係を解明するために、mtDNA、マイクロサテライト、外部形態形質をもちいて境界地域付近の個体群を調査した。その結果、3地点で、mtDNAの中部日本系統と西日本系統が同地的に見られること、2つのmtDNA系統は、両者が同地的に見られる地域を挟んで側所的に分布することが明らかになった。マイクロサテライトの解析の結果でも、この地域のアカハライモリは中部日本集団と西日本集団の2集団に区分され、mtDNAの境界と同じ地域に両者の境界が見られることが明らかになった。mtDNAの2系統が見られた3地点のうち2地点の個体は、すべて中部日本集団に含まれ、残りの1地点の多くの個体が両者の中間的特徴を示すことが明らかとなった。また、mtDNAでは西日本系統に含まれる個体からなる個体群がマイクロサテライトでは中部日本集団の特徴を示す例も2地点で見つかった。外部形態の比較の結果、中部日本集団と西日本集団は多変量解析で区分され、その区分はマイクロサテライトの結果と一致した。マイクロサテライトで中間的特徴を示した集団は、外部形態も中間的特徴を示し、両者の雑種集団であると考えられた。こうしたことから両者は境界地域で狭い交雑帯を形成していると考えられるが、全体としてどの遺伝的、形態学的指標でも両者の差は明瞭であることから、別種の関係にあると考えられた。これらの成果の一部を学術雑誌、学会発表を通して発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で対象とするアカハライモリの4系統間の3つの分布境界のうちの1分布境界の遺伝的関係についての概要がつかめた。マイクロサテライトのマーカー有用性についても学術雑誌に公表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、残る2つの境界での集団間の遺伝的な挙動を解明するために、実験を進めることを最も大きな目標とする。さらに昨年度に明らかになった成果を論文に公表すべく、データの整理、取りまとめ、解析を進める。また、生殖隔離に関係する可能性のある核遺伝子に関わるマーカーでの地理的変異の解明も開始する予定にしている。サンプリングについては、関東から中部地方からのサンプルが必要なので、その地域を重点的に行いたい。
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