2014 Fiscal Year Annual Research Report
尿細管糸球体代謝連関とMetabolic Kidney Diseaseの病態解明
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26253053
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40252457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 一宏 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30424162)
脇野 修 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50265823)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / ニコチン酸代謝 / Sirtuin / Rhoキナーゼ / 腎臓肥大 / 線維化 / 肥満 / 糖尿病性腎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の基礎研究は生活習慣病の基盤病態、Rho/Rhoキナーゼ経路、ニコチン酸代謝異常との関連を検討する。iNMPT遺伝子の発現調節を検討したところ高糖条件では調節されず、線維化促進因子であるTGFbによって発現が上昇することが明らかとなった。NamptのPromoter領域を配列予測soft(Promo)で解析したところ、ヒト-323~-56、マウス-510~-28にCpG islandが局在し、その内部に4個のE-box(Enhancer Box)が存在し、遠位2boxがAhR/ARNT、近位2boxがc-Junの転写因子結合領域と同定した。 更にIn-vitro(培養近位尿細管細胞)でLuciferase assayとEMSAを施行し、まずbasal transcriptionは近位E-boxのAhR/ARNTによる高い転写活性レベルに依存する事、更にTGF-βはDnmt1を活性化し、同部位のCpGメチル化を上昇させる事を明らかにした。更にIn-vivoでも、近位尿細管部位をmicrodissection採取した検体のMSP(Methylation Specific PCR)とbisulfite sequenceの検討から、同2boxのCpGメチル化率がControlで低く、糖尿病性腎症で亢進することを確認した。つぎに肥満では近位尿細管Rho/Rhoキナーゼ活性化により腎障害が増悪することを明らかにした。我々は、肥満関連腎症の尿細管細胞におけるRhoキナーゼの役割を近位尿細管特異的dominant negative RhoA過剰発現マウス(DN)を用いて検討した。6週齢のC57BL/6Jマウス(WT)、DNをそれぞれ低脂肪食群(LFD)、高脂肪食群(HFD)の計4群に分け、12週後腎組織を摘出し組織像、分子生化学的変化を検討した。高脂肪食投与によって、近位尿細管中心にRho/Rhoキナーゼの活性化を認め、DNではその活性化が抑制されていた。WT+HFDで増加をみとめた尿Alb、尿NGALは、DN+HFDでは有意に低下し、また炎症性サイトカインであるMCP1、腎組織における炎症細胞浸潤、線維化の改善を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの供給が順調であることがおおむね順調に進展している大きな理由である。しかしながらnicotinmide N-methytransferaseの研究に関してはその遺伝子改変マウスの表現型が明確でないため解析が難渋している。5/6腎摘モデル、糖尿病腎症モデル、肥満腎症モデル等様々なモデルを用いて検討を加えている。
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Strategy for Future Research Activity |
内因性NMNの励起現象を利用して組織のNMN濃度の測定を幅広く行うことを主眼にしたい。腎組織NMN濃度を比較したところ、糖尿病の早期で既に近位尿細管でのNMN産生は低下し、近位尿細管特異的Sirt1過剰発現マウスではこのNMN低下が阻止されることを見出だした。さらにATP・GTP等のヌクレオチドの動態観察に使用される蛍光物質Mant基(Methylanthraniloyl基)に注目し、Mant-NMN合成に成功した。今後糖尿病性腎症モデルマウスでのNMNの組織濃度測定と共にMant-NMNを腎動脈から投与し、近位尿細管からpodocyteへのNMNの移行などのリアルタイムin vivo imagingを施行する。CKDに伴うニコチン酸代謝連関に関与するシグナル分子の発現を臨床サンプルで実証する。申請者は倫理審査委員会における承認・患者への説明及び文書による同意を得て、既に8検体の糖尿病性腎症の予備検討を開始している。すなわちSirt1、Claudin-1抗体によるヒト検体における免疫染色のプロトコールを確立し、実施した(図15)。その結果、尿細管のSirt1低下と足細胞のClaudin-1上昇が相関し、足細胞のClaudin-1上昇と一日蛋白尿量が相関し、ヒトでもClaudin-1の重要性が示唆される結果を得ている。現在ヒト腎生検サンプルおよび尿検体を更に収集中である。これらを用いニコチン酸代謝、Sirt1/Foxo経路、Rho/Rhoキナーゼ経路の活性化状態につき、以下の解析を進めていく。検尿サンプルに関してはClaudin-1蛋白上昇、NMN低下、NMNAM上昇。腎生検サンプルでは形態所見、Sirt1/iNAMPT/NMMT/Foxo/FCoRの免疫染色、Rhoの活性化指標(phospho-MYPT)、Claudin-1などの細胞間接着分子の免疫染色を検討する。電顕下も形態所見Sirt1/iNAMPT/NMMT/Foxo/FCoRの免疫電顕、Claudin-1など接着分子発現の免疫電顕を行う。
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Research Products
(5 results)