2016 Fiscal Year Annual Research Report
多角的アプローチによる“土器製作者個人の高確度同定法”の完成とその応用研究
Project/Area Number |
26284124
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 個人同定 / 考古科学 / 文化財科学 / 胎土分析 / Structure from Motion / 三次元計測 / 身体技法 / 特殊器台 |
Outline of Annual Research Achievements |
土器製作者個人の多角的高確度同定の精緻化と方法の簡易化について、土器形態や微細痕跡の三次元精細形状取得等(主にSfM)を引き続き実施し、向上させた。また、蛍光X線分析による胎土分析を多数実施し、検出力や特性を経験的に把握した。以上について、本研究の実用上差支えない精度等を見極めるために、様々な対象と条件で試験・検討を行い格段の成果を上げた。「多角的アプローチ」についても、対象の多様な条件に対応させるべく諸方法の組み合わせや比重の軽重の検討をし、一定の成果を得た。 通常の弥生土器はもちろん、特殊器台、埴輪、瓦など様々な資料に多角的アプローチを適用するよう努めた。出土・遺存状況等で困難な条件をもつものも積極的に検討し、形態・胎土等の類似度と変異に関して従来知られていない豊富な知見が得られてきた。また、同一製作者と推定された個体間でさらに詳細な検討を進めたところ、こうした微細なレベルでの検討が過去の行動/行為等の具体的推定に役立つことなどが従来に増して判明してきた。個人のレベルから実証的に過去を復元するという、オルタナティブな展開への貢献を可能とする手がかりが得られつつあり、近く論考を公表予定である。このように方法・理論面での進展にも寄与することが示されつつある。 土器製作の民族調査を今年度も実施した。継続実施で蓄積した記録は膨大であり、整理や検討も進めた。 方法の普及に努め、世界考古学会議World Archaeological Congress(WAC-8)を含む多数の学会発表等を行った。また、資料調査等では多くの関係者に方法を見ていただき、情報提供等への協力の輪も広げた。ひらめき☆ときめきサイエンス、街頭イベント等あらゆる機会を捉えて成果の普及・還元に努めた。なお、三次元計測・記録への関心が高まりつつあり、本研究の成果を盛り込んだ考古学専門誌の特集への協力も進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
個人同定法を高度に応用した展開・普及について、昨年度は九州と中国寧波間で瓦の同笵関係や製品の移動の実証に成功し国内外で報道されるなど大きな成果を得ており、また広範囲の資料への適用により当初の予想以上の思いがけない成果を得ている。それらについて継続的に研究を実施しており、実証・方法・理論の各面にわたって当初の予測より深化・発展していることに加え、考古学あるいは他の学問分野に貢献できる成果も上がりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の特性上、予想外の進展・発展等がありえる。そのため、最終的な到達目標を見据えたうえで、研究期間・予算内で柔軟に対応することとしている。ただし、すでに大きな成果を得ている方面があり、関心も高まりつつあるため、今後はこれを格段に展開させるため新規の研究の再構築なども視野に入れていきたい。
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Causes of Carryover |
三次元スキャナを本年度優先的に調達する予定であった。本研究に係る測定機器の修理交換費用等との折り合いを考慮する必要があったことなどから、三次元スキャナに替わる手法も実践的に検討してきたが、その間、当初最良の機器として導入予定であった三次元スキャナが急速に陳腐・旧式化し、最近発達が顕著になったSfM法(多数の写真のコンピュータ解析により三次元モデルを作成する手法)のほうが目的を達成するに十分もしくはより優れた成果が得られることが判明した。そこで、多方面から検討の結果、SfM法に切り替えることとし、三次元スキャナは購入を断念することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
SfM法による三次元記録を徹底するために解析用PCを新たに導入するとともに、操作に必要な人件費等に充てる。測定機器の修理交換費用等の不確定要素があるが、限られた交付決定額を有効に使用するため、それを含む経費やその他必要な研究の展開とのバランスをとりつつ、かつ、全体の研究計画・目標に支障をきたさないよう十分配慮することとする。
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