2015 Fiscal Year Annual Research Report
視覚行動連合に基づく行動制御における高次運動野と大脳基底核の機能連関
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26290012
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
星 英司 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (50407681)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 意思決定 / 記憶 / 認知 / 行動 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚情報に基づいて適切な行動を行う過程に関与する前頭葉の神経メカニズムを解析した。これまで注目してきた3つのメカニズム(1.視覚と行動の連合に基づいて行動を選択するメカニズム、2.選択された行動を準備状態として保持するメカニズム、3.行動選択を準備状態へ受け渡すメカニズム)に加えて、4.準備状態の動作を適切に発現するメカニズムに注目した。音などの外的契機に基づいて動作を開始する場合と、外的契機なしに内的契機に基づいて動作を開始する場合の間で、細胞活動を比較することを行った。その結果、運動野の細胞が以下の2つのグループの細胞に分類できることが明らかとなった。第一グループの細胞は動作開始を告げる音が提示された直後に一過性の高頻度活動を示した。この音が課題の他の期間に提示された際にはこうした活動はみられなかった。こうした特徴は、第一グループの細胞は動作開始を外的契機に基づいて開始することに選択的であることを示す。第二グループの細胞は外的契機なしに内的契機に基づいて動作を開始する場合に選択的に活動を変化させた。さらに、活動がピークを迎えた直後に動作開始が起こっていた。これらの特徴は、第二グループの細胞は内的契機に基づく動作開始に関与すること示す。さらに、薬剤(ムシモール)の微量注入により一過性にこれらの細胞を不活化したところ動作開始の障害が誘発された。以上の結果をまとめると、運動野には、外的契機や内的契機など様々な状況下で動作開始を適切に開始するためのメカニズムがあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、視覚情報に基づいて適切な行動を行う過程を支える4つの神経メカニズム(1.視覚と行動の連合に基づいて行動を選択するメカニズム、2.選択された行動を準備状態として保持するメカニズム、3.行動選択を準備状態へ受け渡すメカニズム、4.準備状態の動作を適切に発現するメカニズム)について多面的に解析を進めている。まず、細胞活動として各メカニズムの実態を明らかにすることに成功した。続いて、GABA(A)レセプター作動薬であるムシモールを用いてこれらの細胞が多数集まっている脳部位を一過性に不活化することにより、行動レベルでの異常を誘発することに成功した。これは、見出された神経メカニズムが実際の動作発現にとって必須であることを示す。このように因果関係をもって脳機能を明らかにできており、順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
神経メカニズムをより詳細に解明するために、ウイルスベクターを用いた経路選択的遮断法を導入する。一次運動野にテトラサイクリン依存的 (Tet-On)にテタヌストキシンの発現のON/OFFを誘導するコンストラクトを搭載した逆行性ベクター (HiRetベクター)を注入する。続いて、高次運動野にテトラサイクリントランスアクチベーターを発現するアデノ随伴ウイルスベクターを注入する。これにより、高次運動野から一次運動野へ投射する神経細胞に選択的かつ特異的に両ベクターの二重感染が起きる。その後Tet-Onシステムの発現を誘導するドキシサイクリンをサルに経口投与することで、シナプス伝達の遮断を誘発するテタヌストキシンが発現し、二重感染が起きた神経細胞からの神経伝達物質の放出を妨げる。こうすることで、高次運動野から一次運動野への投射を選択的に遮断できる。こうした状況下で行動上の影響を調べ、細胞活動の特性と合わせて解析することにより、高次運動野が一次運動野を制御するメカニズムを因果関係性とともに解明する。
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Causes of Carryover |
既存のシステムを流用すること、同一性能でより単純かつ安価なシステムを導入することで、より効果的な予算運用をはかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
より多くの多点記録電極を導入することにより記録する脳部位を増やす、不活化の対象とする脳部位を増やすなど、実験系の拡充を図る。こうすることで、より幅広い実験結果ならびに神経メカニズムへのより深い洞察を得ることを目指す。
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Research Products
(3 results)