2015 Fiscal Year Research-status Report
算数と数学の接続を図るカリキュラムと教師の指導知の協働開発研究
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26350194
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40303193)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 科学教育 / 算数と数学の接続 / 物語的一貫性 / 数学的指導知 / 授業構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,算数と中学数学の接続の問題と教師の数学的指導知の発達と継承の問題を総合的に捉え,算数を数学に接続する為の理論,教材,カリキュラムを開発するとともに,小中学校の有能な教師の指導技術を,質的分析研究を通して明らかにすることを目的としている。 2015年度は,日本の算数授業の質を吟味する為に,「物語的一貫性」の視点を明らかにする研究を行った。まず算数を長年研究してきた教師と,2,3年程度の経験の教師の授業を,授業における子どもの学習目標の発生と進展に関して分析を行い,その高まりを捉える枠組みを検討した(第7回東アジア数学教育国際会議で発表)。次に,物語的一貫性の視点から授業を捉える理論的枠組みの構築を目指し,過去の経験の語り,複数の声の共鳴,概念形成に通じる学習目標の発達の視点を吟味した(第39回数学教育心理研究国際会議で発表)。最終的に,物語,物語行為の規定,物語行為の認識論的特徴,物語行為の存在論的特徴,物語の筋書き,物語の題材と筋との関係,物語の中心要素としての主人公,出来事を結びつける数学性,からなる理論的枠組みを提起した(日本数学教育学会数学教育学論究に掲載)。 第二に,算数授業における社会的相互作用の規範的モデルを構想し,分数の授業分析を通して検証を行った(第7回東アジア数学教育国際会議で発表)。また子ども達の算数的アイデアの創発現象を捉える枠組みの検討も行った(日本教科教育学会誌に掲載)。 第三に,子ども達の自律性の育成を目指した算数学習として,RPDCAサイクルによる授業を提案し,めあてとふり返りのレベルがいかに連動しているかを検討した(日本教育実践学会教育実践学研究に掲載)。 第四に,全体論の視座から図形分野における算数から数学への移行過程を捉える理論と実践に関する研究のまとめを行った(第12回数学教育国際会議からの招待講演集(著書)に掲載)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,小学校での実験授業のデータ分析と,中学校での授業開発研究を並行して行うこと,小学校での新たな授業研究にも着手することを目指していた。 まず,小学校での実験授業のデータ分析を通して,算数・数学の授業を捉える理論的枠組みを構想し,基本的な枠組みを構成することができた。また,教師の指導の質的分析から,物語的に一貫した授業を構成する上での教師の数学的指導知を今後明らかにする上での基礎資料ができたと考える。 次に,図形の定義と証明に関するデザイン実験を実施することに関しては,公立中学校の教師(大学院生)の協力を得て,図形の証明の授業デザインを構想し,実践した。図形の定義の構成過程については,これまでに収集していた小学校での授業データを分析し,学会発表へとつなげた。 その他にも,社会的相互作用に基づく算数授業のモデル,わり算の系統的発達に関する調査,RPDCAに基づく授業づくりの方法について,学会発表を行うとともに,幾つかは学会誌への掲載へも繋がった。 以上の点から,おおむね順調に研究が進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,これまでの実験授業のデータを分析し,算数から数学への移行段階に当たる学年において,質の高い算数・数学の授業を,物語的一貫性の視点から捉えることを可能にする理論的枠組みの完成を目指すとともに,質の高い算数・数学授業を実現する上での教師の数学的指導知を定式化することも目指す。 実験授業データの分析をすすめるとともに,平成27年度の分析結果や理論的視座と照合しながら,算数から数学への接続過程において,教師がどのような数学的な指導知を発達させるべきかを検討する。成果は,国内外の学会で発表していく。 次に,理論的枠組みに基づいて,文字式や証明といった算数と数学の接続に関わる教材において,生徒の学習を促進する視点や方法を開発していきたい。特に,身体的ジェスチャーなど種々の記号論的手段を通して,生徒の学習がどのように深まっていくのかを検討し,上記の枠組みとともに,授業やカリキュラム開発の視点としたい。 これらの成果は学会で発表し,学会誌への掲載や報告書類の作成に実現していきたい。
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Causes of Carryover |
理論的枠組みの構成に研究の重点を置いたため,平成27年度に計画していた実験授業の一部が実施できなかったため,その成果を発表する為の予算(旅費を含む)を執行していない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に計画していた実験授業とその成果発表を平成28年度の早い時期に実施することとする。
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Research Products
(13 results)