2014 Fiscal Year Research-status Report
BOP層のイノベーション促進に有効なモノづくり教育の研究
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26350439
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤口 学 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80558099)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本のモノづくり教育 / グラスルーツ・イノベーション / 創造性 / 日本のもづくり産業の改善力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、日本やアジアの新興国数か国の社会インフラ系生活設備(トイレ・バスなど)に関する品質等に関するフィールドワークを実施しました。その結果から、日本とアジア新興国間の製品に対する品質や使い勝手にはそれ相当の差異が存在するという仮説を設定し、実際に各国の生活設備品の写真を準備し、それに関する品質や使い勝手に関する使用者の評価を実施しました。具体的には、日本とアジアの代表的な新興国である中国(上海市)で、ほぼ同時期に品質に関するアンケート調査を実施しております。その結果、日本の社会インフラ系生活設備に関する評価は高い反面、アジア諸国の方は極めて評価が低い事が判明しました。しかし一方では、インド等のアジア新興国では、生活の必要性から現地人が開発したグラスルーツ・イノベーション(GRI)も数多く存在することも判明しております。このような背景から、日本のモノづくり産業の改善力(現場力)と新興国のGRIの協同の可能性を探る研究に至っております。この途中成果を、国際会議(Joint HKIVM-SAVE International Conference2015)に論文として投稿し受理されましたので、2015年5月には当該国際会議にて論文を発表する予定です。 また、研究協力団体の一つである社会インフラ系ベンチャー企業(グランマ)のコーディネートで、インド製GRIの一つ(衛生ナプキン製造機器)を題材にして、日本のモノづくり教育をフィリピンで根付かせるための研修(主に創造性研修)を計画しましたが、現地のコアパーソン等の協力を得るに至りませんでした。この教訓から学んだことは、小中学校の段階(若年層)から創造性を醸成する訓練をしないと、日本のモノづくり教育を新興国でダイレクトに根付かせるのは大変であるということです。この教訓も成果の一つとして、来年度は国際会議等で論文発表する予定です。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本のモノづくり産業の改善力(日本式グラスルーツ・イノベーション:GRI)は、江戸時代から育んできた数々の職人技やからくり技術等に見られる一品一品丁寧に作り上げる品質本位の考え方と、主に戦後から企業への導入が進んだ科学的思考に基づく品質管理や生産管理や原価管理等の管理技術(経営工学)とのバランスの上に成立してきた背景が文献調査や研究協力者とのヒヤリングを通して明確になってきました。一方、新興国では、2014年度の生活設備に関する調査から、モノづくりへの品質への認識が低いこともわかってきました。この考察結果は、まだ研究期間が1年未満のため、論文等には至っておりませんが、この結果は、2015年度中に複数の論文にまとめることが可能であり、また同年の前半で、BOP層(開発途上地域での低所得者層)を含む現地人へのモノづくり教育の一環として、新興国の小・中学校向けへの創造性訓練やデザイン思考(主にVE)の教育実施の計画段階まできておりますので、研究は、概ね順調に推移していると考えております。
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Strategy for Future Research Activity |
アジアの新興国の一つであるフィリピンでの、日本のモノづくり教育の現地への導入プロジェクトでの教訓を糧として、次年度は、創造性教育やVEの機能分析に基づくデザイン思考能力を高めるPBL(Project Based Learning)型教育プログラムを新興国の小学・中学校で実施して、新興国でのモノづくり教育の効果性を高めるには、現地の低年齢層からの底上げが重要であることを研究すると同時に、そこでの日本のモノづくり教育の貢献度も高い事を実証したいと考えております。
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Causes of Carryover |
当初インタビューを予定していた現地の専門家の情報が、信ぴょう性のあるインターネットや文献等から得られ、現地への渡航の必要性がなくなったことや、現地でのフィールド調査や国際会議での論文発表が年度内で間に合わなかったため次年度に繰り越しました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の未使用分を使って、昨年できなかった現地調査や国際会議等での研究発表に使う予定です。
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Research Products
(2 results)