2014 Fiscal Year Research-status Report
「社会脳」の定型発達と自閉症スペクトラムにおけるその変容
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26350931
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 貴男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70404069)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム / 社会脳 / 事象関連電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では自閉症スペクトラム(ASD)における社会脳ネットワーク異常の脳内基盤を明らかにすることを目的としている。ヒトの視覚路は一次視覚野から側頭葉の四次視覚野に投射する腹側路(形態視、色認知)と、頭頂葉の五次視覚野に投射する背側路(立体視、運動視)に分けられる。社会脳ネットワークの中でも特に重要な扁桃体ネットワークでは、腹側視覚路と密接な関連がある。従って、一次視覚野レベル腹側路の形態視経路を選択的に刺激する黒白格子縞刺激、色認知経路を刺激する赤緑格子縞刺激、四次視覚野レベル腹側路を刺激する中立、喜び、怒りの表情をしている顔刺激を呈示した際の事象関連電位(ERP)をASD者と健常者において記録した。その結果、1)黒白格子縞刺激に対するERP反応はASD者が健常者よりも速い、2)赤緑格子縞刺激に対するERP反応はASD者が健常者よりも遅い、3)顔刺激に対するERP反応はASD者が健常者よりも遅い、という結果が得られた。これまでの行動学的先行研究では、ASD者では局所的な視覚処理に優れるが、全体的な視覚処理能は低下していると報告されている。本研究の結果は、ASD者における形態視経路の局所的な視覚情報処理機能の亢進、顔の全体的な視覚情報処理機能の低下を示唆する所見であり、行動学的研究に一致する結果であった。以上より、ASD者におけるこれらの非典型的な視覚情報処理機能が、社会脳ネットワーク異常を引き起こす一要因になっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に予定していたASDおよび健常成人におけるデータ収集は終了し、統計解析を行っている。順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、社会脳ネットワーク刺激を用いたERP計測を継続する。 学会および論文により、本研究の成果を発表する。
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Causes of Carryover |
実験数の増加に伴う謝金および実験補助員の作業の増加に伴う人件費のために前倒し申請を行っていたが、最終的には残金が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度行う実験の謝金として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)