2015 Fiscal Year Research-status Report
アフリカ系アメリカ文学と視覚芸術における歴史的トラウマ表象の変遷
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26370349
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
宮本 敬子 西南学院大学, 文学部, 教授 (60182044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トニ・モリスン / ベル・フックス / 黒人女性表象 / 歴史的トラウマ表象 / グレート・マイグレーション / カラ・ウォーカー / ジェイコブ・ローレンス / ミカリーン・トーマス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は以下のような研究活動を行った。 1)5月上旬には日本アメリカ文学会九州支部大会シンポジウム「アメリカ南部とホワイトネス」において「Grace King 文学における人種・ジェンダー表象」という発表をした。この発表は、南北戦争という歴史的トラウマを経験した白人女性作家が、黒人性、白人性をどのように表象しているかを考察するもので、研究テーマをさらに深める契機となった。 2)前年度日本アメリカ学会年次大会シンポジウムで行った発表原稿の一部を発展させて、「黒人女性表象のゆくえーbell hooksとKara Walkerの視覚芸術」という論文にまとめ、7月に発表した。 3)6月下旬にはニューヨーク在住の新進気鋭の映画監督、トーマス・アレン・ハリス氏を講師に迎え、数多くの賞を受賞したドキュメンタリー映画Through a Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence of a People (2014)上映会と講演会を開催した。家族写真を通してアフリカ系アメリカ人の自己認識および文化的レベルにおける黒人表象の変革を目指すハリス氏の活動は、歴史的トラウマに芸術家がどのように取り組んでいるかを知る貴重な経験となった。 4)27年度後半は、黒人女性表象についての先駆的研究者、社会文化批評家であるベル・フックスの著書「オール・アバウト・ラブー愛についての13の試論」の翻訳に取り組み、3月上旬に出版した。この翻訳によって、フックス思想における愛の概念が、歴史的トラウマとしての黒人表象やアフリカ系アメリカ人の自己意識の変容の場と密接につながっていることを再確認することができた。 5)3月下旬には、ハーヴァード大学にて開催されたトニ・モリスンの講演Configuration of Blacknessに出席し、資料収集も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は学科や学会の役職をしなければならなかったため、計画通りに研究を遂行することは困難であったが、シンポジウムや翻訳、論文という形でなんとか成果を残すことができた。また、役職のために国際学会出席なども断念しなければならなかったが、なんとか年度内に資料収集の一部は遂行することができたので大幅な遅れは回避された。
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Strategy for Future Research Activity |
アフリカン・アメリカン・アートの文献は、日本では入手困難のものが多く、また美術館等に行かなければ知り得ないことも多いため、資料収集と出張の事前準備をいかに効率良く進めるかが課題である。対策としては、毎週必ず最新の研究論文を読み、新たに見つかった資料について早めに手配したうえで出張にでかけたい。思いがけない発見も多く、当初の計画よりテーマが多岐に渡ってしまうため、計画にはなかった新たな構想の論文につながっていくことも多いが、限られた時間内できることを見極めつつ、柔軟に対応していく。
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Causes of Carryover |
公務のため、予定していた海外出張を、直前になってキャンセルせざるを得なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表としての著書出版費用に使用する。
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Research Products
(3 results)