2018 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦下に強制収容された日系ラテンアメリカ人に対する戦後補償
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26380198
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
賀川 真理 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10299018)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クリスタル・シティ抑留所 / モチヅキ裁判 / 市民自由法 / カルメン・モチヅキさん / 日系ペルー人 / 戦後補償 / 第二次世界大戦 / 日米交換船 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は研究調査に2回出掛けた。1回目は、2018年9月17-27日まで、ロサンジェルスで戦後補償交渉に携わってこられたカルメン・モチヅキさんほか2人と再度お会いしてインタビューを行ったほか、サンフランシスコでは、アメリカで戦後補償交渉の中核となって動いていたCampaign for Justiceの代表グレース・シミズさんとのインタビューを果たした。 2回目は、アメリカによりラテンアメリカで最多の強制連行者を出したペルー共和国のリマに、2019年2月20日より3月7日まで行き、国立公文書館(Archivo General de la Nacion)で第二次世界大戦中のペルーとアメリカとの国家間関係を裏付ける史料を閲覧したほか、日秘会館を拠点とし、同会館内の移民史料館において、バックグラウンドの異なる5人の日系ペルー人の方々とのインタビューを行った。 さらに日秘会館内の図書館では、日本では入手困難な日系一世による自叙伝(日本語)や、第二次世界大戦中にペルーからアメリカに連行された方々、ペルーにいた方々に関する情報をも含む日系人移住史などの文献(日本語・スペイン語)、近隣のラテンアメリカ諸国で出版された日系人に関する文献(日本語・スペイン語)などを閲覧した。このほか、ペルーからアメリカのテキサス州クリスタル・シティ抑留所などに行くことを余儀なくされた方々の名簿を拝見することができ、これまでに入手した戦後アメリカに残られた方々、日本に行かれた方々に関する名簿と合わせ、その実態を明らかにする上で有益な調査であったことも大きな成果である。 具体的な研究成果しては、査読論文「アメリカ政府による日系ラテンアメリカ人の強制連行と戦後補償―市民自由法制定から30年を経た今、点から線へ(前編)」『阪南論集・社会科学編』第54巻第2号(2019年3月刊行、17-41ページ)を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究開始当初、突然の家庭的事情で自分自身が研究に専念できる環境を整えることができなかった。しかし、それでも少しずつ調査研究を進め、また研究成果も出すことができた。 これまでに、アメリカとペルーに調査研究に出て、本研究の中核である戦後補償交渉を推進してきたキーパーソンとのインタビュー(カルメン・モチヅキさん、ヘクター・ワタナベさん、アリス・ニシモトさん、グレース・シミズさん、リチャード・カツダさんほか)を重ねることができたほか、そもそもの原因である、なぜアメリカ政府(ルーズヴェルト大統領)が日系ラテンアメリカ人をアメリカに連行したのかという点については、国立公文書館(アメリカとペルー)などに行き、関係史料を閲覧することができた。 その結果、本研究課題について学会発表1回(2016年9月、日本アメリカ史学会)、インタビューに関する研究ノート3本、査読論文1本を書くことができた。 ただし、戦後補償に関わられた方々で、関係者から紹介して頂いたにもかかわらず、いまだに連絡が取れていない方が少なくとも2人おられ、またこれまでに行ったインタビューのうち、これまでにまだ全てを起こすことができておらず、また史料の解読についても完全に終わっているとは言えない状況にある。 そのため、当初の研究計画は5年であったが、もう1年間研究を延長させて頂き、これまでの研究でいまだ不足している史実について真相を究明し、戦後補償交渉の全容を解明するためにも、残りの1年間で本研究課題の総仕上げをしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題について、当初は5年計画であったが、まだ不十分な成果しか出せておらず、2019年度は研究期間を1年間延期させて頂き、その間に以下の課題を遂行したいと考えている。 すなわち第1に、アメリカ(サンフランシスコ周辺)で、モチヅキさんとともに戦後補償交渉に携われた方にインタビューを申し込むこと、第2に、アメリカのクリスタル・シティ抑留所から日本に来られ、日系ペルー人として戦後補償に関わられた方へのインタビューを行うこと、第3に、この日系ペルー人であった方が保管していて、すべてを預けたとの情報がある名古屋の大学に保管される史料を閲覧しに行くこと、第4に、アメリカのメリーランド州にある議会図書館に再度行き、アメリカによる日系ラテンアメリカ人に対するアメリカへの強制連行がなぜ行われたのかという点で、不足している情報を補う史料がないかどうかを探しに行くこと、第5に、近い将来著書としてまとめるうえで、あらためて2019年現在、本研究課題に関連した先行業績をアメリカと日本に止まらず、ペルーで集めたペルーや周辺諸国で出版されたものも含め、今後、研究者が利用する上でも役立つような文献リストとしてを書き上げること、そして第6に、これまでの研究成果を公開講座などを利用して発表を行い、広く多くの人々に、史実に基づいた研究成果を知ってもらうことである。 インタビューなどは相手があることなので、不確定要素もあるが、これらについてできる限り実行し、本研究課題を完成させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初は初年度より、現地調査を年に2回ほど行う予定であったが、それができなかったために本年度に先送りされた。 2019年度の調査研究は、国外にはカリフォルニア州(サンフランシスコ)とメリーランド州に行き、国内では名古屋に行き、インタビュー及び史料調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)