2014 Fiscal Year Research-status Report
発達障害学生に必要となる支援の実際と合理的配慮に関する研究
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26380931
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉良 安之 九州大学, 基幹教育院, 教授 (30195408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 悌司 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (00294603)
菊池 悌一郎 九州工業大学, 保健センター, 准教授 (00380741)
福留 留美 九州大学, 基幹教育院, 教授 (40295754)
福盛 英明 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40304844)
松下 智子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (40618071)
高石 恭子 甲南大学, 文学部, 教授 (60248094)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害学生 / 学生相談 / 合理的配慮 / 臨床心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、九州大学・広島大学・九州工業大学・甲南大学の学生相談カウンセラーが合同して、発達障害傾向のある学生に必要となる支援と合理的配慮について検討するものである。研究協力者として発達障害学生支援について多くの経験をもつ田島晶子氏の参加を得て、以下の研究を進めた。 第1回研究会議(平成26年10月19日・於九州大学)では、発達障害傾向のある学生への支援の複数例が報告され、4つの大学の学生相談機関での支援状況を共有した。議論のなかで、自己理解支援を通じて学生との信頼関係を築く必要性や医療機関につなぐ前の自己理解支援の重要性、早期に支援を開始するための教職員との情報共有の工夫と現状、そのさいの守秘義務との両立の工夫、当該学生および保護者対象のグループ活動の必要性等が話し合われた。また発達障害傾向のある学生への支援に関する項目について検討し、仮案を策定した。調査にあたっては、電子版の回答書式を作成して使用することになり、研究会議後にその原案を作成した。 第2回研究会議(平成27年3月1日・於九州大学)では、各大学での支援実践をもとに、発達障害傾向のある学生に必要となる支援の項目および支援事例蓄積のための調査について、詳細に検討した。支援項目(大カテゴリー)として、自己理解支援、心理支援、修学支援、日常生活支援、学生生活支援、コミュニケーション支援、入学・移行支援、出口・就労支援、その他の9項目を設定した。会議後には、研究会議での話し合いをもとに、電子版の調査回答書式を完成させた。 本年度の研究により、支援事例蓄積のための調査の準備が整い、4大学の常勤・非常勤カウンセラーに対して調査への協力を依頼した。そしてすでに、調査への回答が寄せられつつある。なお、本調査研究について研究代表者の所属する九州大学基幹教育院の倫理委員会に研究計画を提出して審査を依頼し、承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の達成目標は、発達障害傾向のある学生への支援項目リストを完成し、その実践例蓄積の作業を開始することであった。2回の研究会議を経て、以下の支援項目リストを作成した。「自己理解支援」…本人の自己理解に繋がる支援(得意・苦手の理解、心理アセスメント、診断のための専門医療機関への紹介等)、「心理支援」…精神的安定や支えに繋がる支援(気持ちの整理や安定、感情コントロールのためのカウンセリング、居場所の提供等)、「修学支援」…学業にまつわる支援(履修支援、試験・レポートに関する支援や調整、配慮のための教員との連携、TAの活用等)、「日常生活支援」…学校生活以外の日常生活における支援(アルバイト、身だしなみ、金銭管理、スケジュール管理の支援等)、「学生生活支援」…学業以外の学校生活にまつわる支援(学内情報の取得や無理のない履修計画作成の支援、学内での過ごし方、サークル活動に関する支援等)、「コミュニケーション支援」…対人関係にまつわる支援(対人関係での対処法・スキルの助言、対人交流の機会の提供、周囲への助言等)、「入学・移行支援」…大学入学前後の時期の移行支援(入学前相談やそれまでの支援機関からの引継ぎ、支援のキーパーソンの設定等)、「出口・就労支援」…卒業や退学等に伴う移行支援(外部支援機関の紹介と連携、インターンシップの利用等)、「その他」。 支援実践例を収集するため、研究代表者・分担者が所属する4大学の常勤・非常勤カウンセラーに担当事例について調査への回答を求めることになり、調査協力依頼文書、電子版調査回答書式、およびその回答マニュアルを作成した。そして本研究計画について九州大学基幹教育院倫理委員会での承認を得て、各大学のカウンセラーに調査への協力を依頼した。一部だが、すでに調査への回答が寄せられている。 以上のように、研究は予定どおりに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目および3年目は、以下の研究を推進する予定である。 1 発達障害傾向のある学生への支援実践例を蓄積し、各支援項目について、具体的にどのような支援が行われているのかを把握する。また、当該学生の支援開始時期の違いや所属学部の違いによって必要となる支援内容がどのように異なるのか、常勤カウンセラーには可能だが非常勤カウンセラーには実施が難しい支援内容があるのか、大学間で支援内容に違いが見られるかどうか等を分析する。それにもとづいて、支援項目ごとの留意点を明らかにするとともに、早期に支援を開始することがどの程度重要なのか、所属学部の違いによって支援内容はどのように異なるのか、支援にあたって常勤カウンセラーと非常勤カウンセラーとがどのように連携すべきなのか等を検討する。3年目には、その成果を関連学会等で発表する予定である。 2 2年目は、九州大学・甲南大学で一般教職員との合同会議を行い、教職員がすでに実施している合理的配慮、今後実施可能と思われる合理的配慮、配慮にあたって検討すべき課題などを議論する。またカウンセラーとの連携の方策についても話し合う。3年目には、広島大学・九州工業大学にて同様の合同会議を行う予定である。 3 上記の2点を参考にしながら、2年目に、全国の大学の教職員・カウンセラーを対象とした発達障害傾向のある学生への支援に関するアンケート用紙を作成し、それを配布する。3年目には、アンケート結果の集計と分析を行う予定である。 上記の研究を推進するため、前年度に引き続き、今後も研究協力者として田島晶子氏の参加を求める予定である。
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Research Products
(1 results)