2015 Fiscal Year Research-status Report
筆記開示がストレス状態からの回復とレジリエンスに与える影響に関する研究
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26380945
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
友田 貴子 埼玉工業大学, 人間社会学部, 教授 (00398538)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 外傷体験 / 筆記開示 / 脳波 / 気分 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
抑うつ気分の開示方法が気分の変化に影響を及ぼすかどうかを調べるために、大学生及び大学院生20名を対象に実験を行った。抑うつ気分を喚起させるような映像を実験参加者に見せ、映像視聴直前、直後、課題実施後の気分の測定を質問紙及び脳波により測定した。質問紙にはVisual Analogue Mood Scale(VAMS:Luria,1975)と感情語尺度(小林,2007)が含まれていた。脳波については感性スペクトル解析システム(脳機能研究所製)を用いて測定した。 映像視聴後に自己開示課題を実施した。実験参加者は映像の感想を友人と話す条件(A群)、映像の感想を紙に書く筆記開示条件(B群、C群)、椅子に座って待機する統制群(D群)のいずれかに割り振られた。筆記開示条件は、B群には感想を書いた紙は回収しないことを書く前に伝え、C群には回収すると伝えた。 実験開始時に実験について口頭と書面で説明、書面にて同意を得た。また実験終了後には、実験の内容についてディブリーフィングを行った。 実験で得られた調査票及び脳波のデータについて2要因の分散分析(混合計画)を行った。VAMSとネガティブ語について、自己開示課題を行うと映像を見た後よりも気分がよくなるという傾向がみられた。自己開示課題の効果は、友人と話す条件(A群)の方が、B群と統制群(D群)よりも抑うつ気分を改善しやすいという傾向が見られた。また、感想を書いた紙を回収すると伝えているC群の方が、回収しないと伝えたB群よりも抑うつが改善しやすいという傾向が見られた。脳波についても「喜び」「悲しみ」「リラックス」の各指標において、質問紙で得られたものと類似の結果が得られた。 以上のことから、友人や誰かに自己開示をすることが抑うつ気分からの回復に効果があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2については、当初の実験参加者を30名としていたが、実際の実験参加者が20名となってしまったものの、分析結果は比較的満足のいくものであった。また、筆記開示の方法をいくつか設定する予定であったが(自筆の筆記、インターネットへの書き込みなど)今回は開示することに重きを置くこととし、筆記開示の方法については自筆によるもののみとした。開示することが重要と考え、次の研究でも筆記の方法は追究しないことにしメールによる開示のみを取り入れることにした。それ以外の点においては、概ね予定通りに進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究で、外傷体験を口頭で開示したり、筆記開示することが気分の回復に効果的であることが示された。次に、外傷体験を筆記開示することが、レジリエンスに影響をおよぼすかどうかについて、予定通り研究3を実施する。 日常的に継続して筆記開示を行うことが、ストレス事態に遭遇した際のレジリエンスに影響を及ぼすかについて実験的に検討を行う。対象者は大学生24名であり、インターネットのメール機能により、毎日ストレスに感じたことを実験者に報告する群としない2群に割り当てる(当初の計画では、実験群を、自筆筆記群、キーボード入力群、インターネット開示群の3群に設定していたが、自己開示の手段は重要ではないことが考えられるので、本研究では開示したことがもっとも把握しやすい、メールでの開示のみとする)。 実験は、メールでの外傷体験(ストレス体験)を3週間にわたり行ってもらうもので、その前後でレジリエンス尺度と抑うつ尺度、感情語リストなどにより構成される質問紙に回答してもらう。同時に感性スペクトル解析システム(脳機能研究所製)により脳波の測定を行う。実験群1には毎日ほぼ同じ時間にその日に起こったストレスフルな体験を報告してもらい、実験群2にはその日起こった楽しい体験について報告してもらう。統制群は3週間、実験者に対する開示は行わない。3週間後、実験開始時に行った測定(質問紙及び脳波)を行い、実験開始時と終了時のデータの比較を行う。
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Causes of Carryover |
実験参加者の人数が予定より少なかったため、謝金分が余ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究3の実験参加者への謝礼に使用予定。これまでの実験とは異なり、参加者への物理的負担が増加することが予想されるため、当初の計画より謝金額を増やす予定である。
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