2016 Fiscal Year Research-status Report
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26381058
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Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
河田 敦子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (00531542)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フランス教員養成史 / ギゾー法 / フェリー法 / ゴブレ法 / フランスの国家公務員 / 日仏比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フランスの研究者がフランス近代教員養成史および教員身分の歴史をどのように捉えているかについての文献調査を実施した。フランスには、9月と3月の2回渡航し、ミッテラン図書館にて文献渉猟を行った。 主な文献は、Maurice Gontard “L’Enseignement Primaire en France dela Revolution ala loi Guizot(1789-1833)”、Etienne Balibar “Droit de cite” Quadrige 2002、J.Ozouf, Nous les maitre d’ecole, Paris, 1967、Id., l’ecole l’eglise et la republique,Paris, 1982、G.Duveau, Les instituteurs, Paris, 1957 等である。 本調査の結果、フランス革命後、ライシテ(教育の宗教からの分離)を実現するために、国家がライシテの教員養成の後ろ盾となって、教会と対立しながら初等教員の国家公務員化を果たしたことがわかった。この過程は、平坦な道のりではなく、1833年ギゾー法では教会勢力を初等教育に利用し、義務教育の普及を図りながら、1881~82年フェリー法では義務教育の無償性、義務制を実現し、1886年ゴブレ法によって、義務教育教員を全て国家公務員として、ライシテの教員のみ採用することが法制化されたことがわかった。 なお、上記の文献は日本における研究で参照されているが、ゴブレ法を作成したゴブレについての文献はあまり紹介されていないので、本研究は今後ゴブレ法およびゴブレに関する研究を中心に実施したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、海外で刊行されているフランスの初等公教育史に関する原著文献調査が目標であった。平成28年9月と平成29年3月の2回渡仏し、文献調査を実施し、文献の所在と入手は概ね順調に進展している。 「国家公務員」の性格を理解するには、フランス人の国家観と日本人の国家観の相違を踏まえる必要があり、共和主義思想とその国家観についての文献調査研究が必要となった。また、公務員の歴史についての調査研究も併せて行う必要性があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1886年10月30日公布のゴブレ法により、フランス公教育において教員は国家公務員とみなされるようになった。他方、日本において森有礼が閣令第三十五号によって初等教員を判任官待遇にしたのも同年12月28日であった。世界が帝国主義と植民地主義に傾斜していく中で、教員が国家のための存在と位置づけられることは共通していたが、この後は、その「国家」の性格の相違によって、国家公務員の性格がフランスと日本では正反対ともいえるものになっていった。例えば、フランスでは国家公務員の政治的行為に制限は無いが、日本には制限がある等、である。また、ゴブレ法によって示唆される「国家公務員」の在り方も日本のそれとは大きく異なっていた。本研究では、その違いを明らかにし、「国家主義」という言葉が無限定に用いられてはならないこと、グローバル化か自国優先か、国家の在り方が大きく問われる現在を、どのように歴史的に見直すことができるかを究明する研究となるよう推進したい。
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Research Products
(3 results)