2016 Fiscal Year Annual Research Report
Critical Pedagogy for K-12 curriculum
Project/Area Number |
26381179
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
渡部 竜也 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10401449)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 批判的思考 / 批判的教授法 / カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で到達できたのは、次の3点である。 1点目は、ジルーらに見る「批判的教授法」の教育論と、エニスらに見る「批判的思考」の教育論との違いを、具体的な指導計画の比較から具体的に明らかにできたことである。その違いは、前者は社会学主義的、後者は心理学主義的であるとまとめることができる。つまり、批判的教授法は、批判対象となるテキストに対して、その著者が持つ「準拠枠」を明らかにし、そしてそれと社会が持つ規範やそれを生み出すシステムとの関係を見ようとするのに対して、エニスらは批判対象となるテキストに対して、その著者個人の誤謬や手続き上のミスに問題を帰してしまうことが明らかとなった。 2点目は、このジル―に見られる教育論を元に、具体的な授業構想を立てたことである。ここでは、その一例として、中高用に開発した授業事例について紹介したい。日米の教科書の違いを比較させ(日本は生徒1人1人に教科書が配られるが、米国では教科書貸与制度である)、その違いから、それぞれその教科書を定めた者たちが、教科書に何を期待しているのか、そのねらいとしている部分を解明させる。そして教育システムとの連続からその構造を解き明かす。子どもたちにとって、教育が持つ外部社会との見えないつながり(権力作用)を見えるようにしている。 3点目は、こうした批判的教授法を育成するための配列原理について、具体化したことである。小学校では、集団の中にいると、その集団で「常識」とされるものは、その他の可能性について見えなくなってしまうことがあること(=自明という概念)を理解させることに重きを置く。中学校ではそうした集団は意図的に作られていくことを理解させていく。そして高校では、そうした事例を発見できるように組織していく。これが最も効果的な配列である。
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