2015 Fiscal Year Research-status Report
読字障害児の読みの代償的方略の形成要因の解明と支援法の開発
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26381342
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
後藤 隆章 常葉大学, 教育学部, 准教授 (50541132)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 読字障害 / エピソードバッファ / ワーキングメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
読字障害児の中には、低年齢時において仮名文字の読み困難を示したものの、年齢増加に伴い、有意味単語の読み成績が改善する事例が報告されており、読みの代償的方略が関与すると考えられている。読みの代償的方略とは、音韻処理スキルが劣っている読字障害児において、意味的文脈や視覚的記憶などを代替的に利用することで読みの促進を可能とする読み方略である。そのため、読字障害児における読み方略の形成要因を明らかにすることは、彼らに対する新たな読み支援法の開発につながることが期待される。 平成26年度は、学齢期の定型発達児におけるエピソードバッファ評価課題の発達基準値を明らかにし、ワーキングメモリとの関連で読字障害児の認知特性を検討することが可能となった。 平成27年度は、読字障害児を対象に単語の意味情報、または音韻情報の活性化を促し、その働きかけに伴う有意味単語の読み処理効率の変化と認知特性との関連について検討を行った。その結果、複数のワーキングメモリにおいて困難を示す事例の中には、単語の意味的ネットワークを活性化させることで有意味単語の読み処理が促進されるタイプと単語の音韻情報を活性化させることで有意味単語の読み処理が促進されたタイプが認められた。これより、単語の意味情報、および音韻情報の活性化レベルを調節することで、個々の読み障害様相に適応可能な代償的読みの方略の形成アプローチ法の開発が可能になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していたとおり、読字障害児に対して、読みの代償的方略形成プロセスを実験的に検討を行い、促進要因を明らかにすることが可能となった。そのため、平成27年度の研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。さらに読字障害に関する事例研究に加えて、学校単位での研究協力が得られ継続的に読み支援についての研究プロジェクトが進んでいることもおおむね順調に進展していると判断した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、読みの代償的方略形成プロセスに関して、注意欠陥多動性障害や自閉症などが重複する読字障害児を対象に加えて検討を行い、各障害特性からの影響について検討を行う。そのために、簡易的に利用できるように指導評価プログラムのパッケージ化を図り、継続的な支援効果について検討を行う。 また、読字障害児の在籍学校の協力を得て、読みの代償的方略の形成が学校での学習行動に変容を与えるのかについて検討を行い、その波及効果について検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初、読字障害児を対象とした測定を大学外で実施する予定であったが、定期的な読み書き支援会の開催が大学内で可能となり、調査のための会場費、測定協力者への交通費、および謝金での支出項目が大幅に減少したため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度では、検討対象者数を増やすとともに、大学外での調査実施回数を増やす。特に、読み支援のニーズが高く、比較的大規模小学校からの調査協力が得られており、アセスメントから支援実施までの一連の流れを短期間で一斉に実施することが要求されている。そのため、複数の測定ブースを設置し、短時間での読み支援のためのアセスメント測定ができるように、パソコンや通信環境、データ記録装置などの測定環境の整備を行う予定である。
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Research Products
(7 results)