2015 Fiscal Year Annual Research Report
構造生物学的手法によるウイルスの細胞侵入メカニズムの解明
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26713018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋口 隆生 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50632098)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 感染症 / ウイルス / 蛋白質 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルスが標的細胞に侵入する際に、糖蛋白質がどの様な構造変化を伴うのかはウイルス学における大きなトピックの一つであるが、多くのウイルスで詳細なメカニズムは未解明のままである。そこで、本研究では申請者らが以前より取り組んでいる麻疹ウイルス等のパラミクソウイルスやマールブルグウイルス等のフィロウイルスを主なモデルとして細胞侵入メカニズムの全容を解明すべく、X 線結晶構造解析を用いて細胞侵入の鍵となる糖蛋白質の構造を解明し、ウイルス感染実験と組み合わせて詳細な侵入メカニズムのモデルを提唱することを目指している。 本年度はパラミクソウイルス科に属し流行性耳下腺炎を引き起こすムンプスウイルスのX線結晶構造解析に成功し、受容体結合能を担う糖蛋白質の構造を決定することに成功した。更に、受容体分子とムンプスウイルス糖蛋白質の複合体構造に基づき、受容体分子との結合エネルギー計算や、クリカンアレイ、感染実験を行った。その結果、受容体はこれまで教科書的に言われている単純なシアル酸単体ではなく、より複雑な糖鎖で構成されていることが明らかとなった。 この構造はウイルスの細胞侵入メカニズムの解明に大きく貢献することが出来るだけでなく、糖蛋白質を標的とした抗ウイルス薬の設計・開発にもつながることが期待される。また、現在、副反応や抗原性に問題があるムンプスウイルスワクチンについて、構造に基づいたワクチン設計により安全性の高いワクチンへの改良が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルスの細胞侵入やワクチン抗原として重要なムンプスウイルス糖蛋白質のX線結晶構造解析に成功し、構造を決定した。また、構造に基づき、詳細な受容体との相互作用をエネルギー計算、結合実験、感染実験等で確認した。従って、ウイルスの細胞侵入メカニズムの解明に向けて当初の予定通り研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ウイルスと受容体との詳細な相互作用について、さらに分子生物学的な実験を進める予定である。また、ウイルスの細胞侵入に伴う詳細な構造変化観測のため、その他のパラミクソウイルスやフィロウイルスについてさらなる構造解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
必要試薬をキャンペーン等で大量購入し想定より安く購入できたため。旅費をキャンペーン等で早期購入により想定より安く購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
蛋白質の結晶化や構造に基づいた分子生物学的な実験を進めるために必要なスクリーニング試薬やプラスチック製品の物品購入に使用する。
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Research Products
(4 results)