1988 Fiscal Year Annual Research Report
原爆被爆者における正常および熱傷瘢痕部皮膚培養細胞の細胞遺伝学的研究
Project/Area Number |
62570455
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
貞森 直樹 長崎大学, 医学部, 講師 (30039896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
糸山 貴浩 長崎大学, 医学部, 医員
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Keywords | 原爆被爆者 / 皮膚培養細胞 / 染色体異常 |
Research Abstract |
〔目的〕本研究では、原爆被爆者および非被爆者の皮膚培養細胞の染色体異常を検索し、被爆者における皮膚癌の発生機構を細胞遺伝学的に追求する。〔方法〕原爆被爆者および非被爆者から採取した皮膚組織を2ないし7週間培養。皮膚細胞が充分増殖した時点でコルセミドを添加し、染色体標本を作製する。必要に応じ、染色体分染法を用いて解析する。〔結果〕対照群としての非被爆者では7名中6名は分析した細胞は全て正常核型を示し、残りの1名においてのみ25細胞分析中1細胞(4%)に染色体構造異常を認めた。結局のところ、非被爆者においては293細胞中1細胞(0.4%)に染色体構造異常を認めたに過ぎなかった。一方被爆者においては、被爆直後の放射線急性症状の認められた9名全ての皮膚培養細胞に放射線誘発と考えられる転座・欠失・逆位などの染色体構造異常を認め、その異常細胞頻度は近距離被爆者の中には100%の人も認められ、異常細胞頻度は大体被爆距離に相関すると思われた。これら9名のうち3名からは、同一異常核型を有する7種類の異常クローン形成が認められた。一方被爆者であっても、被爆時に重庶蔽物があったり、爆心地より3.0Km以上の遠距離被爆の場合には、非被爆者の場合と同様に、染色体構造異常はほとんど認められなかった。〔考察〕原爆被爆者なかでも重遮蔽のなかった近距離被爆者の皮膚細胞においては、被爆時に相当なDNA障害が生じ、そのDNA障害は染色体レベルの異常を誘発し、被爆後40年余を経た現在もなお残存していることが判明した。染色体異常を有する異常細胞頻度は、被爆距離に相関すると思われ、将来被爆者の放射線量推定にも有効と考えられる。また、近距離被爆者の培養細胞中からは同一異常核型を有するクローン形成も認められ、このことは皮膚癌の前駆状態にあるとも考えられ、今後早急に被爆者における皮膚癌発生率の疫学的調査が必要であることを示唆している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 貞森直樹 他: 長崎医学会雑誌. 61. 373-382 (1986)
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[Publications] 本田武夫,貞森直樹 他: 広島医学. 41. 433-436 (1988)
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[Publications] 本田武夫,貞森直樹: 長崎医学会雑誌. (1989)
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[Publications] 貞森直樹 他: 西日本皮膚科. (1989)