2015 Fiscal Year Annual Research Report
力学的回転運動の回転スピン流変換
Publicly Offered Research
Project Area | nano spin conversion science |
Project/Area Number |
15H01021
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
能崎 幸雄 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30304760)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピン流 / スピン回転結合 / 表面弾性波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、スピン回転結合による交流スピン流の生成を実験的に検証した。さらに、回転スピン流によるスピンダイナミクスの強励起の実現に向けて、回転スピン流と同様な効果が期待できる回転磁場を用いた歳差運動の選択的励起実験を行った。主な研究成果は、下記の通りである。 ①ニオブ酸リチウム基板上に1対の櫛形電極を形成した表面弾性波(SAW)デバイスを作製し、電極間のSAW伝播経路上に強磁性NiFe薄膜と非磁性Cuの2層膜パターンを形成した。SAWが2層膜パターンを伝播すると、スピン回転結合によりCu膜中に交流スピン流が生成され、これがCu膜と接合したNiFe膜に注入されると磁化に交流トルクが作用する。交流スピン流の周波数がNiFe膜の強磁性共鳴条件と一致すると、大振幅歳差運動が誘引され、エネルギー散逸が生じると考えられる。そこで、ベクトルネットワークアナライザを用いて交流スピン流による強磁性共鳴に由来するエネルギー散逸の有無を調べた。その結果、SAWの波数ベクトルとNiFe膜の磁化ベクトルが平行な場合に大きなエネルギー散逸が生じ、直交配置ではエネルギー散逸が見られなくなる理論予想と一致する角度依存性を確認した。さらに、Cu膜とNiFe膜の間にスピン流を遮断する酸化ケイ素膜を挿入すると、エネルギー散逸効果が大幅に減少した。これらは、固体デバイスでスピン回転結合による交流スピン流の生成が可能であることを示す重要な証拠と考えられる。 ②交差型コプレーナ線路を用いて、GHz帯の広い周波数領域で回転磁場を生成することを試みた。交差部に垂直磁化膜を成膜し、マイクロKerr効果測定装置を用いてその磁化変化を測定した結果、マイクロ波の遅延時間を制御することにより正磁場と負磁場の一方のみで強磁性共鳴を誘引することができ、回転磁場の生成を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、①回転スピン流生成用のSAW導波路の設計とその伝送特性の評価、②スピン回転結合による交流スピン流生成の実験検証、および③マイクロKerr効果測定装置によるFMR誘引の観察を主要な課題として研究を行った。前記の概要で説明したとおり、これら3つの課題はすべて予定通り実現することができた。さらに、回転スピン流と同様のトルクを与える回転磁場を生成し、これにより強磁性薄膜に誘引した強磁性共鳴を観察することに成功するなど、当初計画を上回る成果を得ることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、マイクロKerr効果測定装置の精密試料ステージを利用することにより、交差型コプレーナ線路における強磁性共鳴の空間分解観察を実現する。これは、スピン回転結合を利用して生成する回転スピン流の空間分布を評価する重要な観察技術であり、本研究において優先順位が高い実験といえる。次に、2つのSAW導波路を直交させたデバイスを作製し、回転スピン流の生成を試みる。既に、回転磁場による選択的強磁性共鳴誘引実験に成功しており、強磁性共鳴スペクトルの磁場依存性から回転スピン流生成の有無を検出するノウハウは取得済みである。最後に、これらの研究成果に基づき、回転磁場及び回転スピン流による強磁性共鳴の強励起、および磁化反転アシスト効果の評価を行う。磁化反転アシスト効果の評価は、研究代表者が最も得意とする分野であり、研究遂行に支障はない。
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Research Products
(13 results)