2015 Fiscal Year Annual Research Report
フォトクロミックエレクトロニクスに向けた光異性化分子の集積化と光電変換機能
Publicly Offered Research
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
15H01098
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
若山 裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (00354332)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光異性化 / トランジスタ / 光電変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では光異性化分子のジアリールエテン(以下、DAE)を高度に配列した分子膜を構築し、これをトランジスタ素子に組み入れた光電変換機能を実証することを目的とする。これまでの研究で、ある種のDAE分子膜はトランジスタのチャネル層として機能すること、そのとき光でスイッチした電流のON/OFF比が1000にも及ぶことを示してきた。これは光異性化と半導体という二つの異なる性質を両立する新物質を見出したことと、半導体-絶縁体相転移を光で誘起するという新現象を見出したことを意味する。しかもこのときDAE分子膜はアモルファス構造であるにも関わらず導電性と光応答性を示すことがわかった。すなわちランダムに分布する分子間を電荷がホッピング伝導しつつ、光によるπ共役系の変化がトランジスタ特性のスイッチングに大きく関与していることを現している。本来、分子膜での電気伝導はπ共役系分子が規則配列したときにバンド伝導となり、そのときこそ伝導度が大きく増加する一種の協働的現象である。そこで本課題では、DAE分子を高度に配列した結晶性の分子膜を形成し、電気伝導においてバンド伝導を支配的にさせ、ここにπ共役系の光応答を誘起することにより飛躍的な光電変換機能の向上を目指す。このためには規則配列とπ共役系の変化を両立する分子構造の設計・高配向分子膜の成長・効果的に光と電気を結ぶ光電変換インターフェースの構築など研究項目について、領域内の合成化学や光化学の専門家と異分野共同研究を推進しながら本課題に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題では分子配列を高度に規則化したDAE分子膜を創製し、光電変換機能を飛躍的に向上させることを目的とする。これを実現するため、平成27年度には規則性配列に向けた技術確立として、成膜技術の最適化と分子構造の最適化の両面に注力した。 一般に分子膜の電気伝導ではホッピング伝導とバンド伝導の両方が寄与した機構になる。バンド伝導をより支配的にさせるためには高配向性(すなわち高結晶性)の分子膜を成長させることと、なおかつトランジスタ構造にしたときに電荷の移動を促進するために分子面が基板表面に対し垂直配向したedge-on配向を誘起することが求められる。このため分子間のパッキングを促進する分子構造の最適化、結晶成長を促進するための真空成膜条件の最適化、分子配向をedge-onにするための基板表面の最適化に取り組んでいる。DAEの分子構造としては、まず京都大学松田グループ(A02班)との共同で、ジアリールエテン中心骨格の両端にチオフェン環とフェニル環が縮合した置換基を取り付けた分子について検討を進めている。さらに大阪教育大辻岡グループ(A03班)から結晶性DAE分子の提供を受け、トランジスタ用結晶性薄膜成長に取り組んでいる。また基板条件の最適化については、産総研鎌田グループ(A01班)から摩擦転写法による表面処理を施した基板の提供を受け、分子のedge-on配向を試みている。現在、これらの領域内共同研究を基に結晶性DAE薄膜の成長とトランジスタへの応用、さらには高次光応答の発現に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、結晶性DAE薄膜の成長については一部成功しているものの、トランジスタ動作に優位なedge-on配向は得られていない。これまでの検討結果からDAE分子構造の最適化が最優先課題であることが明らかになりつつある。そこには電荷移動を向上させるための合成段階での高純度化や、光電変換機能向上のための開環体高純度化も含まれる。これらの検討事項は京都大学松田グループとの共同研究をさらに促進する。真空蒸着の最適化としては蒸着時の基板温度と蒸着速度の精密制御が必要とされる。基板温度としては40℃~60℃の範囲内で±3℃程度、蒸着速度としては2Å/min±0.5Å/min程度まで高精度化させる。これらの検討により光電変換機能の向上を目指す。
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Research Products
(4 results)