2015 Fiscal Year Annual Research Report
雲母・粘土鉱物の最大摩擦係数の物理
Publicly Offered Research
Project Area | Crustal dynamics-Unified understanding of intraisland deformation after the great Tohoku-oki earthquake- |
Project/Area Number |
15H01145
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐久間 博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20400426)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 摩擦係数 / 雲母・粘土鉱物 / 吸着水 / 断層 / 層状 / 圧力溶解 / 定方位 / 湿度 |
Outline of Annual Research Achievements |
断層によく見られる層状の雲母・粘土鉱物は、通常の岩石・鉱物よりも最大摩擦係数が著しく小さく、断層のすべり挙動を支配する重要な物質である。これら層状鉱物の最大摩擦係数は水の影響を強く受け、ごく微量でも水による潤滑効果が高いことが層状鉱物の一つである白雲母に関して示唆されている。また鉱物表面の吸着水は圧力溶解に伴う断層の強度回復に影響を与えており、その物性を知ることが重要である。本研究では1.乾燥条件下で粘土鉱物の最大摩擦強度が低い原因、2.含水条件下で、摩擦強度が低下する原因、3.圧力溶解に関連する結晶表面の吸着水の物性の解明を目的とする。 本年度は、雲母・粘土鉱物の摩擦メカニズムを解明するため、膨潤性粘土鉱物の定方位試料の作製を実施し、モンモリロナイトに関して定方位試料を作製することに成功した。この試料および定方位性の低い試料を用いた摩擦実験を実施した。具体的には、法線応力を5 MPaから80 MPaまで変化させながら、一定すべり速度で摩擦係数を測定した。予備的な結果として、どちらの試料とも湿度の影響を強く受けることがわかり、今後湿度を精密に制御した実験を実施する。層状鉱物の摩擦係数は、弱面である層間ですべりが起きる場合が多いと考えられる。そこで層間のすべりに対する摩擦係数を第一原理計算から導出する手法を開発した。まず、単結晶での摩擦実験を実施した白雲母に関して、第一原理計算を開始し、現在摩擦係数の導出を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の2課題を研究計画に挙げた。(1)乾燥状態における摩擦すべりを決める物性値は、雲母・粘土鉱物の形状、平滑性と定方位性にあると仮説を立て、この仮説を検証する。(2)摩擦係数に対する吸着水の影響を調べるため、白雲母とモンモリロナイトを研究対象とし、結晶表面に存在する陽イオンをNa+とCs+に置換し、その水和イオンの影響を調べる。 (1)に関しては、モンモリロナイトに関して定方位試料の作製に成功し、摩擦実験を開始した。その過程で湿度の精密な制御が必要であることが判明したため、実験装置の改良を実施している。また来年度に実施予定であった摩擦に関する第一原理計算を開始し、予備的な結果を得ている。(2)について、白雲母についてはすでにNaとCsイオンが表面に存在する場合の吸着水の影響に関して結果を論文で報告した(Kawai 他、J. Geophys. Res. Solid Earth)。またモンモリロナイトについては湿度制御が必要であることから現在装置開発中である。
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Strategy for Future Research Activity |
摩擦試験について:今年度の実験から、雲母・粘土鉱物の摩擦実験では精密な湿度制御が必要であることが明らかになったことから、湿度制御下で定方位および定方位性の低い試料・粒径分布を制御した試料に関して摩擦実験を実施する。また定方位試料に関してはモンモリロナイトだけでなくサポナイトに関しても作製法の確立を目指す。吸着水の影響に関しても上記定方位試料に関して表面・層間の陽イオンを交換した試料を準備して、定量的な議論ができるよう、実験を実施する。 理論計算について:摩擦のメカニズムを解明するための、第一原理計算を引き続き実施する。本年度の理論計算から、層間イオンの取り扱いについて計算の方向性が見えてきたので、この経験を生かし、効率的な理論計算を実施する。これらの結果を生かして、最終的には結晶粒間の薄膜水の物性・安定性の評価も実施する。
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Research Products
(9 results)