2015 Fiscal Year Annual Research Report
アーキアの転写装置を利用した多段階転写反応の動的メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integral understanding of the mechanism of transcription cycle through quantitative, high-resolution approaches |
Project/Area Number |
15H01357
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
平田 章 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (60527381)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | X線結晶構造解析 / 転写 / アーキア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアーキアRNAポリメラーゼ(RNAP)の改良型転写開始前複合体(PIC)の調製と結晶化を重点的に行った。アーキアの基本転写因子TBP、TFBおよび転写活性化因子Tarを大腸菌発現系を用いて大量に調製し、RNAPは超好熱性アーキアThermococcus kadakarensis から単離・精製した。これら調製した4種類のタンパク質を転写活性化領域およびプロモーター領域を含む2本鎖DNAに混合し結晶化を行った。しかし、現在のところPICの結晶は得られていない。一方、Tar単独の結晶化に成功し、大型放射光施設(SPring-8)のX線源を利用して、Tar結晶のX線回折データの収集を行った。その結果、1.5 A 程度のX線回折点が見られる高分解能のX線回折データを得ることができた。また、Tarのセレノメチオニン置換体結晶(Se-Met)も作成し、Se-Metのセレン原子の異常分散項を含むX線回折データも1.8 A 程度で収集することができた。Tar単独とSe-Metの2つのデータをX線結晶構造解析用のプログラムを用いて解析した結果、Tar単独の良好な電子密度図と初期構造が得られた。初期構造を基に、Tar全長の分子モデルを構築して精密化した結果、1.58 A 分解能のTarのX線結晶構造を決定することができた。Tarは結晶中でダイマーを形成しており、ダイマー形成に重要なα-ヘリックス構造が見られた。また、DNA認識に重要なHTHモチーフが存在しており、2つの対称性を持つHTHモチーフを通じて、TarがDNA上の回文配列を認識していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、アーキアの改良型転写開始前複合体(PIC)およびSpt4/5を含む転写伸長促進複合体の結晶化には至っていない。しかしながら、転写活性化因子Tar単独のX線結晶構造を決定することができ、その構造情報を基盤にTarのDNA認識メカニズムをさらに解明すれば、PICの結晶化に有益な知見を得ることができると考えている。したがって、TarとDNA複合体の構造情報を得る研究も進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、アーキア改良型転写開始前複合体(PIC)のX線結晶構造解析に焦点を絞って研究を進めていく予定である。現在の最大の問題点であるPICの結晶化には、Tar-DNA複合体の構造情報を利用して、PICの結晶化に重要なDNAの長さや配列の種類を最適化する必要がある。そのため、Tar-DNA複合体のX線結晶構造解析も遂行する。一方、安定なPICを調製するために転写促進因子TFEも加えることにする。しかし、PIC調製に用いたThermococcus kadakarensis (Tko) RNAポリメラーゼ(RNAP)は、TFEとの相互作用が弱いため、PIC調製の際、TFEがTkoRNAPから解離し、均一なPICを調製することができない。この問題点を解決するために、Tkoの遺伝子組換えシステムを用いて、TFEとTkoRNAPのサブユニットRpoFを融合させたTFE-TkoRNAPを構築する。TFEのC末端側ドメインはTkoRNAPのストークを司るRpoE/Fヘテロ二量体と相互作用することが知られている。よって、TFEのC末端側ドメインのリンカー領域をバイパスにしてRpoFのN末端側を結合した遺伝子をTko内で発現可能なTko変異株を構築する。最終的に、TFEのN末端側のHis×6タグ配列を利用して、Ni-NTAカラムクロマトグラフィでTFE-TkoRNAPをTko変異株から容易にTFE-TkoRNAPを精製する。
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Research Products
(2 results)