2015 Fiscal Year Annual Research Report
lincRNAとmiR2118によるイネの新しい生殖メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Neo-taxonomy of noncoding RNAs |
Project/Area Number |
15H01476
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
小宮 怜奈 沖縄科学技術大学院大学, その他部局等, 研究員 (90631416)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | non-coding RNA / microRNA / 生殖 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、タンパク質をコードしないnon-coding RNAが大量に転写され、生命機能を制御することから、non-coding RNAの新たな機能が報告されている。植物のnon-coding RNA研究は、個々のnon-coding RNAの生理機能が解明されつつあるが、植物のゲノムワイドな非コードゲノム領域の機能と存在意義に関する知見は極めて乏しい。 本研究では、減数分裂前の生殖初期に特異的に発現する700種以上の生殖lincRNA (large intergenic non-coding RNA)とmiR2118の機能、及び、その転写制御機構解析し、植物生殖細胞発生のメカニズム解明を目指す。タンパク質をコードしないこれらlincRNAには、miR2118が認識する22塩基長の共通配列 (作動エレメント) が存在する。生殖lincRNAsは、miR2118切断を介して、21塩基長のsmall RNAに切断され、イネの生殖細胞特異的に働くArgonauteタンパク質と結合することを明らかにしている (Komiya et al., Plant J 2014)。本年度は、ゲノム編集により生殖lincRNA/miR2118変異イネの作出を試みた。また、葉組織と葯組織を用いたDNAメチローム解析、及び、DNA-FISHを行い、生殖lincRNAの転写制御機構解明に挑んだ。 また、実験医学のノンコーディングRNAテキストブックに植物のRNAiについて執筆した (小宮 怜奈, 植物『コサプレッション』が先駆けとなったRNAi, 実験医学 RNAテキストブック2015;33 (20):26-7)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
700を超える非コードゲノム領域から、生殖lincRNAが一斉に発現するには、ダイナミックな核内分布やクロマチン制御を伴った転写の制御機構が示唆される。そこで、葉組織と葯組織を用いたゲノムワイドなDNAメチル化解析を行った結果、生殖組織で特異的に、DNAのメチル化が変化する領域 (Differentially methylated regions:DMR) を2160箇所同定した。生殖lincRNA、及び、転写開始上流領域(推定プロモーター)のDMRは、4箇所と少なく、多くのDMRは、遺伝子、及び、プロモーター領域に存在することが明らかとなった。 また、DNA-FISHにより、生殖lincRNAの非コードゲノム領域の三次元核内動態を観察した。生殖lincRNAの非コードゲノム領域の特異的な局在は観察されなかった。以上のことから、生殖lincRNAの発現は、DNAメチル化を介したクロマチン変化やダイナミックな核内分布による制御の可能性が低いことが示唆された。 生殖lincRNAの機能を明らかにするため、ジーンターゲッティング法により、 生殖lincRNA欠失イネやmiR2118変異イネを作出した。初年度は、生殖lincRNAを軸に、生殖lincRNA/miR2118の機能とその転写メカニズム解明にむけた “材料づくり & 基盤づくり” を精力的に進めることができ、おおむね順調に研究が進んでいると評価した。 また、日本植物学会第79回大会にて、シンポジウム (Diverse physiological functions of plant non-coding RNA) を開催し、国内外の植物non-coding RNA研究交流を深めるとともに、積極的に研究成果を発信した。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度に作成した多系統イネのT1世代を大々的に展開し、イネの生殖期における生殖lincRNA/miR2118の機能を詳細に解析する。これらジーンターゲッティングイネを用いて、トランスクリプトーム解析を行い、生殖lincRNA群の発現抑制度合いやmiR2118ファミリー遺伝子群の発現解析を網羅的に行う。さらに、蛍光 in situ ハイブリダイゼーションにより、生殖細胞内の生殖lincRNA/miR2118の発現部位、及び、時期を詳細に解析する。 700種を超える生殖lincRNAの発現には、DNAメチル化を介したクロマチン変化やダイナミックな核内分布による制御の可能性が低いことが示唆されことから、本年度は、生殖lincRNAの上流領域に着目し、プロモーター解析を行う。
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