刑事違法論の再検討―生命侵害場面における功利主義的考慮導入の是非・限界を中心に―
Project/Area Number |
20K13342
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
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Research Institution | Keio University (2022) Tohoku University (2020-2021) |
Principal Investigator |
坂下 陽輔 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 准教授 (10735400)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 緊急避難 / 過失犯 / 功利主義 / 違法性 / 生命侵害 / 正当化 |
Outline of Research at the Start |
人工知能技術の発展に伴い登場する自動運転車の開発・利用の許容のためには、一定の功利主義的考慮に基づき、社会的便益のために生命を犠牲にすることが刑法上正当化される必要がある。しかし、従来、主として緊急避難論の文脈において、生命を功利主義的考慮の犠牲にすることは許されないとの議論が根強く、いかなる場面で功利主義的考慮に基づいて生命侵害が正当化されうるのかは、明らかでなかった。本研究は、ドイツ・アメリカにおける議論を比較参照しつつ、わが国における、功利主義的考慮に基づく生命侵害の正当化の是認可能性とその限界の論定・具体化を行うものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度のドイツにおける法状況・議論状況の調査・分析に続いて、アメリカにおける法状況・議論状況の調査・分析を行った。 アメリカにおいては、そもそもドイツと異なり、緊急避難の議論において、他人の生命を犠牲にしつつ便益を得るということに対する警戒感はそれほど大きくなく、功利主義的な発想が受け入れられていること、そのため、自動運転車の開発・利用に関して、功利主義的考慮に基づいて許容する、という議論が多くなされていることが確認された。これにより、ドイツにおけるように生命対生命の比較の排斥を絶対視することには必ずしも理由がないこと、それゆえ自動運転車の開発・利用が許容される余地は十分にあるということ、については十分な示唆を得られたといえる。 しかし、アメリカにおいても、いわゆる臓器移植事例等における生命侵害は認められておらず、そのことと自動運転車の開発・利用の許容との関係をさらに分析・検討する必要があるところ、臓器移植事例等における生命侵害が認められない理論的根拠を明瞭に言語化できている文献は発見できず、それゆえ自動運転車の開発・利用がそのこととの関係でなお許容される根拠を明瞭に言語化できている文献も発見できなかった。 以上のような形で、2022年度は、アメリカにおける生命対生命の比較に関する議論を一定程度確認することができたが、決定的な議論を発見することはできなかったため、2023年度も引き続き、アメリカにおける議論を調査・分析する必要が残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度はアメリカにおける議論状況を検討する期間であった。 生命対生命の比較に寛大なアメリカにおける議論の基本的な部分を調査・分析することはできたが、決定的に参照に値する議論は発見できず、調査は途上といえるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は比較法の対象であるアメリカにおける議論の調査・検討を継続する予定である。 その上で、その調査・検討が終わり次第、比較法から得られた知見を踏まえて、日本法の考察を行い、論文としてまとめる予定である。 計画していた、調査研究のためのドイツ及びアメリカ出張は、前年度まではコロナウィルス感染拡大の状況に鑑みて断念していたが、本年度は可能と思われるので、ぜひとも実施し、一定の意見交換ができるように努めたい。
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Report
(3 results)
Research Products
(9 results)