Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究の3年目にあたる今年度は、以下における項目について研究を進め、結果について学会および論文において発表を行った。(1)エルニーニョ/南方振動現象(BNSO)に関係した表層貯熱量の変動特性昨年度に引き続き、観測された表層貯貯熱量の伝播特性に焦点を当てた解析を行った。フィリピン海において貯熱量偏差が強化する様子は以前から指摘されていたが、本研究では貯熱量に焦点を当て、さらに海面熱フラックスや海面風応力データなどを解析することにより、この貯熱量偏差の強化が海面熱フラックスと海面風応力によるエクマン・パンピングの両方の効果によって生ずることを明らかにした。さらに、両者によって強化された貯熱量偏差が、海面水温偏差の変化を通じて、大気場に影響を与え得る可能性を指摘した。これは、フィリピン海における大気海洋相互作用の可能性を示唆する結果であり、ENSOメカニズムの有力な仮説のひとつであるwestern Pacific oscillator theoryにおいて強調された西部熱帯太平洋の重要性を観測データ解析の立場から支持する結果である。(2)10年スケールにおける表層貯熱量の変動特性昨年度に引き続き、太平洋熱帯域の10年スケール変動の解析を行ない、南太平洋の風応力偏差と関係するスベルドラップ輸送による効果と、北太平洋および南太平洋を伝播して赤道域に到達する海洋の波動による効果の二つによって、太平洋赤道域の表層貯熱量が生成される様子を示した。定量的な解析から、南半球におけるスベルドラップ輸送による効果のみでも、赤道域の貯熱量の振幅の50%以上を生成し得ることを示した。一方、北半球のスベルドラップ輸送は、赤道域の貯熱量の生成に与える影響が非常に小さいことを示した。(3)昨年度に引き続き、北太平洋中緯度における数十年スケール変動の解析を行った。観測データおよび海洋大循環モデル結果の解析から、黒潮続流域において、貯熱量の伝播と海面水温および大気場が密接に連動している様子が明らかになった。これらは黒潮流量の変動、アリューシャン低気圧の活動度、北太平洋亜熱帯モード水のコア水温の変化とも関連していた。このように数十年スケールの北太平洋中緯度における気候変動の理解を深める成果が得られた。
All 2006 Other
All Journal Article (3 results)
Journal of Oceanography 62
Pages: 227-234
Geophysical Research Letters 33
Journal of Oceanography (印刷中)