Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
18年度は、多極共存型デモクラシー形態を採るオランダのイスラーム教徒に対する政策と、他のヨーロッパ諸国(イギリス・フランス・ドイツ)における政策を比較することで、オランダの特徴をより鮮明化することに努めた。イギリスには一定期間、滞在し、現地の研究者や、モスクに対するインタビュー調査を行った。イギリスの場合、旧植民地であったパキスタンやインドからのイスラーム教徒移民が多数居住しているに関わらず、彼らが英語を話し、イギリスの制度や習慣を知っていたために、彼らがイスラームという異なる宗教を信仰している集団であるということを認識し、政第を立てるのが遅れた。それが議論されるようになったのは、ここ数年のことである。フランスでは、個人主義と厳格な政教分離の原則にのっとり、イスラーム教徒移民という集団として彼らを扱うことを拒否している。彼らの問題は、パンリュー(郊外)の低所得者層の問題として扱われ、宗教の違いという本質的な問題が無視されている。また公の場では女性がスカーフをかぶることが法律上、禁止されている。ドイツの場合、トルコ出身者が圧倒的な多数を占めるため、イスラーム教徒の問題は、移民問題と直結している。ドイツでは、移民に対して厳しい政第が実施されており、差別も根深い。以上に挙げた国と比較して、オランダは早くからイスラーム教徒を一つの集団であるとみなして、政策を立案してきたことは、特筆に価する。