Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
本研究では,年輪年代学的手法による日本における木材流通の解明という,新しい産地推定法の確立を目指すことを大きな目的として,1)スギ標準年輪曲線の広域ネットワーク構築,2)スギ標準年輪曲線の広域ネットワークによる気候場の復元,3)文化財を用いた産地推定への応用という3点に焦点を絞り,研究を遂行した。特に日本の広範囲,及び長期にわたる標準年輪曲線構築の両面を視野に入れた対象樹種として,北海道を除く日本の全域に広く分布し,かつ有用材として使用されてきたスギ(Cryptomeria japonica)に重点をおいて研究を行った。そして,東日本~中部日本における中・近世のスギを含むヒノキ科樹種の標準年輪曲線ネットワークを構築した。各調査地で出土木質遺物・古材の詳細な年輪年代編年を行うとともに,それぞれに地域標準年輪曲線を構築した。この地域標準年輪曲線は,北東北とそれ以外の地域という2つグループに区分でき,それぞれの地域内ではクロスデーティングできるものの,互いの地域間ではクロスデーティングができない。このような標準年輪曲線ネットワークの地域区分により,年輪年代学による木材の産地推定に発展させることが可能となる。しかし,これらの標準年輪曲線は,暦年代が明らかな現生木標準年輪曲線との連結ができていないという課題が残る。そのため,森林総合研究所所蔵の大径・高樹齢の現生木標本などの高解像度デジタルカメラによる接写での調査や,秋田県茂木屋敷跡遺跡など近世遺跡出土木質遺物の調査を進めたが,これまでのところ現生木と出土木質遺物・古材との連結は達成されていない。今後,更なる標準年輪曲線ネットワークの地域的拡充と延長を継続して進めていくことが,文化財科学研究の発展につながると考えられる。
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