盛岡藩の北上川舟運と自然環境の利用に関する総合研究
Project/Area Number |
20K00944
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
兼平 賢治 東海大学, 文学部, 准教授 (30626742)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 北上川 / 舟運 / 盛岡藩 / 自然環境 / 盛岡藩家老席日記雑書 / 石碑・古墓 / 稲井石(井内石) / 石碑 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、盛岡藩政や領民の生活と不可分の関係にある東北地方最大の大河・北上川を研究対象とする。近世における河川を中心とした自然環境の利用に関心を寄せ、なかでも北上川舟運に着目して、その実態を解明する。A)舟運の拠点における事務手続きや船の差配の実態、B)河口の仙台藩領石巻に下った船は何を積んで盛岡藩領に戻っていたのか、C)船を造り操縦する技術がいかに発展・継承されていたのか、D)盛岡藩領の商人が税負担をしてまで積極的に舟運経営に取り組む背景の解明、の4点に絞り、整理の進む下柳千葉家文書を活用しながら明らかにすることで、先行研究を基に概説されるにとどまる現在の研究状況を克服することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、新型コロナウイルス感染症の影響も限定的となったことから、岩手県奥州市での下柳千葉家文書の撮影に加えて、これまで実施できなかった現地調査・フィールドワークを実施した。また、研究報告も行った。 下柳千葉家文書については、これまで概要は把握していたが、今年度、研究協力者の協力を得て、帳簿類などを見開きの状態で撮影したことから、内容を詳細に把握することが可能となった。これまで下柳千葉家文書を用いて研究してきた研究協力者からは、初見で注目される内容である旨の感想が聞かれ、今後の研究に資する史料撮影となった。未調査はダンボール1箱分となった。 現地調査・フィールドワークについては、1)北上川舟運と接続する利根川舟運について学ぶために、千葉県立関宿城博物館を見学し、周辺地域についてフィールドワークを行った。2)石巻市博物館と稲井石の採掘現場の見学では、北上川舟運の拠点である石巻の歴史を学ぶとともに、北上川を遡航する際に運ばれたとされる石巻産稲井石がどのように採掘されていたのかを知ることができた。岩手県にみられる明治期の稲井石でできた石碑を建立した石材商の子孫が、現在も石材商を営んでいることも確認できた。3)稲井石の古墓・古碑の分布調査(岩手県一関市・奥州市・北上市・盛岡市)を実施した。石材を検討することになるため、地質学を専門とする研究者に同行を求め、様々な知見を得ることができた。北上川を遡航する際の船荷の実態の一端を解明する手がかりを得た。 研究報告については、2023年2月に、奥州市教育委員会・えさし郷土文化館主催「地域史研究講座2023」の共催となり、えさし郷土文化館において、これまでの研究成果を、研究代表の兼平が「仙台藩の流通」、研究協力者の渋谷が「北上川舟運からみた藩境地域の諸相」と題して講演を行った。講演を聴講された市民からは、貴重な情報の提供もあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度(1年目)、2021年度(2年目)は、新型コロナウイルス感染症の流行により、出張に制限が設けられるなどしたため、現地調査やフィールドワークを実施することが困難な状況にあり、北上川の河口の宮城県石巻市(2020年度予定)と、北上川舟運で運ばれた荷物の関東の集積地であった千葉県野田市関宿(2021年度予定)で開催を予定していたフィールドワークと研究会は、実施を見送らざるを得なかった。岩手県奥州市での下柳千葉家文書の撮影も、限定された回数のみの実施にとどまった。 こうした状況にあったことから、1年目は機材を購入し研究体制を整えることや、データベースの構築に注力することで、2年目以降の研究に備えた。2年目も新型コロナウイルス感染症の流行による影響を受け、出張が制限されるなどしたことから、現地調査やフィールドワークを十分行うことができず、研究の幅を広げるのに大きな支障となった。こうしたなか、データベースの構築については、着実に進めることができた。 2022年度(3年目)は、新型コロナウイルス感染症の影響が限定的となり、研究代表者、そして研究協力者も出張が可能な状況となったことから、これまで実施を見送っていた現地調査・フィールドワークを実施し、下柳千葉家文書の写真撮影も作業を進めた。 このように、3年目においてやっと現地調査・フィールドワークを実施できたことから、これらの成果を踏まえた研究を進めるため、1年間の期間延長を行った。2022年度に研究協力者の協力を得て、精力的に作業と研究を進め、また、研究成果の発表機会を設けたこともあり、進捗状況はやや挽回することができたが、それでも2022年度の成果を分析し、研究成果に結実させる作業が残されていることから、「やや遅れている」状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、奥州市教育委員会が管理する下柳千葉家文書の撮影を進めることができたが、新たにダンボール1箱分の未調査の史料があることが判明したことから、急ぎこの史料の撮影を進めるとともに、目録化して分析できるようにする。 また、現地調査・ファイ―ルドワークを進めることができたことから、そのときに得た知見をもとに研究協力者と研究会を開き、成果を共有しながら研究を進める。特に、北上川を遡航する際の船荷については、稲井石が運ばれていたことに注目し、先行研究とは異なる新たな発見があったことから、その成果を論文化して公表する。また、北上川舟運と地域とのかかわりについても、稲井石を通して解明する手がかりを新たに得たことから、これらの成果についても実証的な裏付けのもと、論文化して公表する。 盛岡藩「雑書」の記事のデータベース化については、最終巻の『盛岡藩家老席日記雑書』第50巻(天保11年、寛文6年)が2022年3月に刊行され、これをもって「雑書」のすべての記事について把握し、付属のDVDで文字検索も可能となったことから、2022年度は、これまで構築してきたデータベースにこれらの新たな情報を取り込んでデータベースを完成させることができた。そして、「雑書」に続く『盛岡藩家老席日記覚書』も2022年度以降、継続して刊行されることになったことから、これらも加えたデータベースを構築し、それをもとに盛岡藩の自然環境と河川に関する研究を進めることとする。
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Report
(3 results)
Research Products
(8 results)