研究課題/領域番号 |
02044021
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
舛本 泰章 筑波大学, 物理学系, 助教授 (60111580)
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研究分担者 |
LINDBERG Joh アリゾナ大学, 光科学センター, 研究員
FLUEGEL Bria アリゾナ大学, 光科学センター, 研究員
KOCH Stephen アリゾナ大学, 物理学科, 教授
PEYGHAMBARIA ナツサー アリゾナ大学, 光科学センター, 教授
佐々木 史雄 日本学術振興会, 特別研究員 (90222009)
三品 具文 筑波大学, 物理学系, 助手 (10209744)
金光 義彦 筑波大学, 物理学系, 講師 (30185954)
SOKOLOFF Jas アリゾナ大学, 光科学センター, 研究員
KOCH Stephem アリゾナ大学, 物理学科, 助教授
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
6,600千円 (直接経費: 6,600千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1990年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
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キーワード | CdSe / ホットエレクトロン / ポンプ・プロ-ブ分光 / フェムト秒 / 励起子 / BiI_3 / コヒ-レント現象 / コヒ-レントフォノン効果 / 積層欠陥 |
研究概要 |
〈CdSe薄膜におけるホットエレクトロンの非平衡分布〉パルス幅70fsの白色光を用いた超高速ポンプ・プロ-ブ分光をCdSe単結晶薄膜中の熱い電子系の超高速バンド内緩和に適用した。GaAsと異なりCdSeにおいては、可視光によるキャリア励起に対しては伝導帯、あるいは価電子帯中に単一のアネルギ-谷(ΓーValley)しか存在しない。フォトンエネルギ-1.99eV、パルス幅70fsの励起光を用いて観測されたポンプ・プロ-ブ分光の結果により、0.50fsのスペクトルではポンプ光より低エネルギ-側に非平衡なキャリア分布が観測された。CdSeについて非平衡キャリア分布が観測されたのは最初である。 〈CdSe薄膜における励起子共鳴励起下での超高速分光〉CdSeは価電子帯のA、Bバンド中の正孔と伝導帯の電子からなるA励起子、B励起子があるが、これらを共鳴的に励起したときの励起子系のダイナミクスについて研究した。低エネルギ-側のA励起子を共鳴励起したときの吸収スペクトルの変化分を調べると、低エネルギ-側の誘導吸収はすぐに消えるが、B励起子の高エネルギ-側の誘導吸収は逆に増加して行く。この様なスペクトル変化は励起子吸収線のブロ-ドニングを考えると、ほぼ定量的に説明できる。特に、B励起子吸収線のブロ-ドニングは高密度に励起されたA励起子とB励起子との散乱による衝突広がりであると考えられる。この様に、A、B異種励起子間の散乱過程が吸収線の衝突広がりにより初めて観測された。 このエネルギ-ブロ-ドニングより、平均のA励起子ーB励起子散乱時間がおよそ30fsと求められた。また、B励起子共鳴励起のとき、時間経過とともに、A励起子の吸収飽和の減少に対して極めて速いB励起子の吸収飽和の減少が観測された。CdSeでは価電子帯のAバンドとBバンドのエネルギ-差がLOフォノンのエネルギ-と同程度であることから、このB励起子の吸収飽和の急激な減少はB励起子がLOフォノンを放出して、A励起子状態へ次々と散乱して行くためであると考えられる。 〈BiI_3における超高速コヒ-レント現象の観測〉層状結晶BiI_3の間接励起子吸収端近傍の透明領域には、積層欠陥による励起子吸収線、R、S、Tが見られる。フェムト秒レ-ザ-を用いた強励起条件下において、積層欠陥励起子R、S、Tのコヒ-レントな光学応答ならびに、コヒ-レントフォノン効果について、60fsのポンプ・プロ-ブ法および縮退四光波混合によって調べた。 ポンプ・プロ-ブ法によって測定した、積層欠陥励起子R、S、T線および透明域(630nm)についての温度10Kにおける吸収の時間変化は吸収線R、S、Tに対しては時間分解能よりも大きな負の時間遅延においても変化が現れるが、これは励起子系のコヒ-レンスを反映したものである。正の時間遅延においては、ブリ-チングと一緒に周期およそ300fsの振動が観測されたが、この振動は数十psにもわたって続く。一方、透明域においても同じ周期の振動が観測された。この振動は、プロ-ブ光の透過スペクトル全体の周期的なスペクトルシフトであり、時間原点では瞬間的に長波長側にシフトしていることが確かめられた。周期300fsは、14meVのエネルギ-に対応するが、これはBiI_3のTOモ-ドのフォノンエネルギ-に一致する。従って、この振動現象はBiI_3の格子振動が直接的に時間変化として観測されたもので、コヒ-レントフォノン効果だと考えられる。
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