研究概要 |
PDGF,TGFBおよびFGFは、多くの種と細胞種にひろく分布し、その作用も細胞増殖、増殖阻害、生存維持等多岐にわたっていることが明らかになった。それらが実際の治療薬になる可能性も実験的に確認することができた。以下要約する: 1.ヒト線維芽細胞の無血清培養系を確立した。基礎培養液にMEDB104を用い、インシュリン、トランスフェリン、デキサメサゾを添加すると、細胞は無血清でも長期間生存した。これに種々のサイトカインを作用させ、サイトカインの役割を検討することが可能になった。 2.ヒト線維芽細胞では、PDGF、FGF、EGFが細胞増殖促進因子として作用していることがわかった。これに対しTGFBは逆に増殖を抑制した。促進と抑制は、細胞内で異なる2次シグナルを介して起ることが示唆された。 3.ヒト血管内皮細胞の培養法を確立した。この細胞ではFGFが必須なサイトカインであった。基礎培養液はMCDB-104で血清を加えた。この条件で内皮細胞は70-100POLに達した。 4.ヒト内皮細胞の増殖を、TGFB、TNFが条件により抑制した。特に、TGFBではそのアイソフォーム(B1,B2)では異なった抑制パターンを示した。そこで、TGFBのレセプターの解析を行ない、それぞれのアイソフォームを特異的なレセプターを同定した。 5.ヒト内皮細胞はFGFを除くと、アポトーシスが誘導された。FGFが内皮細胞の生存維時因子として働いていることがわかった。成体内でも同様なことが起こっていることが示唆された。 6.FGFは、イヌの心筋梗寒の修復に際し、血管新生を促進した。サイトカインが、治療薬として脚光をあびる生鞭をつけることとなった。
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