研究課題/領域番号 |
05041039
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
松田 藤四郎 東京農業大学, 農学部, 教授 (90078121)
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研究分担者 |
KAMPHOL ADUL カセサート大学, 経済学部, 教授
大田 克洋 東京農業大学, 農学部, 助教授 (00078205)
藤本 彰三 東京農業大学, 農学部, 教授 (80147488)
菊地 眞夫 (菊池 眞夫) 千葉大学, 園芸学部, 教授 (10241944)
新沼 勝利 東京農業大学, 農学部, 教授 (60078160)
松本 信二 東京農業大学, 農学部, 教授 (00109547)
山崎 耕宇 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (30011878)
ADULAVIDHARA Kamphol Professor, Kasetsart University
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
15,500千円 (直接経費: 15,500千円)
1995年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1994年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1993年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
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キーワード | タイ農業 / 農業生態系 / 小農経営 / 農業商業化 / 農法 / 農業多様化 / Chiang Mai / Khon Kaen / Village study |
研究概要 |
近年における東南アジア農業の構造的変化は農業商業化として把握できる。これは技術、制度、経済そして経営における質的量的変化であるが、必ずしもエステート部門の拡大を意味しない。それは伝統的な小農部門において顕著に生じている現象で、その変容過程とインパクトに関する実態分析を踏まえて一層の農業発展方向を検討する必要がある。本研究は商業的農業の展開が著しいタイにおいて、異なるエコシステムの下における農業商業化の実相を持続的農業視点から解明することを目的として3年計画で実施した。本研究では、東北タイのコンケン県、北タイのチェンマイ県、および中部タイのノンタブリ県を実態調査の対象地として、それぞれ2村落、合計300戸の個別農家を選出し、質問表を用いて経営と技術に関するデータを収集した。個別農家のインタビュー調査や県農業局など政府期間における関連調査も実施した。個別農家質問票データは東京農業大学でコンピュータに入力し、共同研究者が各自の分担課題に添ってデータの加工・分析を行った。各自の報告論文は全体として英文報告書に取りまとめ中である。 主要な研究成果を要約する。 1.小農部門における農業商業化は水田のみならず畑作地帯でも生じている。水田地帯における近年の変化は野菜や果樹など園芸作物への転換である。このためには、水田土地基盤を独特な輪中方式による畑へと転換する必要がある。洪水に見舞われ易いノンタブリ県では当然のことであるが、コンケンやチェンマイにおいても同様な土地基盤整備が農家の自己負担で推進されている。輪中のなかに高広畦を設置するシステムは、雨季・乾季の気象条件が異なる地域では合理的な水利用・管理を可能にする優れた農法である。 2.ノンタブリとコンケン両県における調査村では極めて集約的な野菜栽培が行われており、その収益性は稲作に比べて著しく高い。しかし、農薬や液肥など化学的投入財への過度の依存が一般化しており、食品の安全性や農民の健康のみならず水質汚濁など深刻な環境問題を生じつつある。収益性を維持しつつも環境保全型の代替農法の開発が緊急課題となっている。 3.チェンマイの水田地帯では労働集約的な伝統的水田多毛作から果樹経営への移行が顕著である。ノンタブリで見られるような輪中方式による樹園地化によって、ロンガンやマンゴ-の導入が進んでいる。これは、チェンマイ果実の高収益性および農外産業への若年労働力の流出による農民の高齢化を反映したものである。 4.コンケン県、あるいは広く東北タイの畑作地帯では、1960年代から市場対応型の畑作が展開し、特定作物の単一栽培を特徴としてきた。しかし、単一栽培は価格下落によって壊滅的ダメ-ジを受け、別の作物への転換を余儀なくされたり、エコシステムを破壊し、森林伐採、塩類土壌などの環境問題を生起してきた。現在、キナフ、メイズ、キャッサバに替わる換金作物の導入が模索されているが、作物選択および栽培方法においてエコシステムへの配慮が必要であると指摘できる。 以上のように、本研究では農家の実態調査に基づいて、商業的農業の展開に関する土地基盤整備、野菜栽培技術、野菜流通過程、食品加工、経営収支など広範な領域で問題点の解明を行った。稲作の低所得水準を反映して、農業商業化は野菜や果樹への転換という形態で進展していること、その過程で種子の提供や生産物の購入など商人が積極的に介入していることが明らかになった。タイ政府も近年では稲作転作政策を採用し、野菜や果樹を含む経営複合化を奨励している。しかし、先進的な野菜栽培を行う調査村の事例を検討した結果、近代農法を活用した商業的野菜生産では深刻な環境問題が生じ易く、生態系と調和した栽培技術の確立が緊急の課題であると結論できる。
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