研究概要 |
N-metyl-D-aspartate (NMDA)受容体拮抗薬(ケタミンおよびMK-801),覚醒剤(メサンフェタミン)および抗うつ薬アナフラニール反復投与のムスカリン受容体(mAchRs)に及ぼす影響をマウスを用い受容体結合実験と行動薬理学的手法で検討した。また, NMDA受容体拮抗薬のドパミン受容体刺激作用を除去するために, MK-801にハロペリドール(ドパミン受容体拮抗薬)を併用投与した。さらに,アナフラニールに関しては, N-metyl-D-aspartate (NMDA)受容体に及ぼす影響を, NMDA受容体刺激薬glutamateおよびNMDA刺激後のcGMP産生量を小脳スライスを用いて測定した。ケタミン(0, 12. 5, 25および50mg/kg, 3日間隔計5回), MK-801 (0, 0. 125, 0. 5,および1mg/kg,連日7日)およびアナフラニール(0, 5, 10, 20mg/kg,連日7日)はそれぞれ投与回数および投与量依存的に前脳においてmAchRsの競合阻害薬[^3H]quinuclidinyl ([^3H]QNB)結合を増加した。しかし,メサンフェタミンでは変化しなかった。ハロペリドールを併用投与するとMK-801による^3H]QNB)結合増加は完全に抑制した。よって,ドパミン受容体刺激作用がNMDA受容体拮抗薬(ケタミンおよびMK-801)反復投与後のムスカリン受容体増加に大きな役割を果たしていることが示された。さらに,ケタミンおよびMK-801を反復投与すると,スコポラミン(0. 5もしくは1mg/kg)の行動薬理学的受容性は低下したが,アナフラニールではスコポラミンの感受性は変化しなかった。以上より, NMDA受容体拮抗薬(ケタミンおよびMK-801)は前脳ムスカリン受容体を増加させるだけでなく,アセチルコリン線維に何らかの障害を与えると考えられる。 抗うつ薬アナフラニール(0, 10もしくは20mg/kg)の反復投与は小脳スライスにおいてglutamateおよびNMDA刺激のcGMP産生量を低下させた。よって,抗うつ薬の臨床的効果の発現にはNMDA受容体活性低下が何らかの役割を有していることが考えられる。
|