配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2007年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2006年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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研究概要 |
筆者は、シアノ架橋型金属錯体Rb_xMn[Fe(CN)_6]_<(x+2)/3>・zH_2Oにおいて、Mn-Fe間の電子移動とMn^<3+>におけるヤーン・テラー効果がドライビング・フォースと考えられる電荷移動型相転移現象(高温相⇔低温相)を観測している。また、この系で、532nmパルスレーザー光を照射することにより自発磁化が消失する光現象を見出している。本研究では、光磁性現象のメカニズムの検討およびダイナミクスの解明を行うことを目的とした。 (1)単結晶試料合成:光磁性現象に伴う光誘起ダイナミクスを電子状態および構造的な観点から検討することを目的として、まず、RbMnFe錯体の単結晶合成を目指し、Rb_<0.88>Mn[Fe(CN)_6]_<0.96>・0.5H_2Oの単結晶化に成功した。RbMnFe錯体はアルカリカチオンドープ型プルシアンブルー類似体に分類されるが、このタイプの単結晶合成は非常に難しいことが知られており、Rb_<0.88>Mn[Fe(CN)_6]0.96・05H_2Oの単結晶が与えた構造情報は、構造化学分野において大変重要なものである([2]Z. Anorg. Allg. Chem., 633, 1134(2007).)。 (2)可逆光磁性現象: RbMnFeシアノ架橋型金属錯体,Rb_<0.88>Mn[Fe(CN)_6]_<0.96>・0.5H_2Oにおいて、可視光で可逆な光磁性現象を見出した。分光エリプソメトリーを用い可視光部の誘電率測定を行い、低温相および高温相の光学遷移を調べたところ、低温相は430-540nm付近にMn-Fe金属間電荷移動吸収帯,高温相は410nmに[Fe(CN)_6]配位子金属間電荷移動吸収帯を有することが示唆された。この結果に基づき、フェロ磁性体である低温相に532nm光照射を行うと自発磁化が消失し、さらに、この磁化が消失した状態に410nm光を照射したところ、磁化の回復が観測された。この光磁化回復は、Mn^<II>-NC-Fe^<III>→Mn^<III>-NC-Fe^<II>への逆光電荷移動に起因して生じることを見出した。また、532nm光照射によって発現する自発磁化を示さない相の磁気オーダリングを検討したところ、反強磁性体であることが示唆された。従って、RbMnFeシアノ錯体における可逆的光磁性は、強磁性(低温相)⇔反強磁性(光誘起相)間の光スイッチング現象であることがわかった。強磁性体⇔反強磁性体の光スイッチングは、本研究が初めての報告例となる。
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