研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、前年度までの成果である運動学習中の行為と誤差の連関構築メカニズムに関する研究を発展させ、運動学習における両眼視の役割についての研究を行った。両眼視の生物学的意義や情報処理メカニズムについては、これまでにも数多く研究が行われ計算論モデルが提案されている(Ding & Sperling, 2006 ; May et al., 2012)。しかし、視覚運動系の学習における両眼視の役割については調べられたことがなかった。たとえば、左右の眼からフィードバックされた運動誤差情報は、運動時に用いられる潜在的な視覚過程で別々に処理されているのだろうか、あるいは統合されているのだろうか。また、運動学習過程の誤差感度は片眼を使った場合と両眼を使った場合では異なるのだろうか。これらの問題に答えるため、本研究では運動学習中に潜在的に両眼または片眼だけに視覚情報を呈示し、それぞれの条件で誤差を観測したときに運動が修正される度合いに差が見られるかどうか検証した。実験には、両腕が見えない状態でコンピュータ画面上のカーソルを用いた到達運動を行い、その過程で数試行に一回カーソルの運動方向が回転して表示される、視覚運動変換課題を用いた。そして、回転変換の次の試行で観察される運動修正量から、運動誤差に対する脳内学習過程の感度を調べた。その結果、視覚運動回転変換の学習における誤差の感度には、両眼視と片眼視で差がないことが示された。両眼から入力された誤差と片眼から入力された誤差が、運動学習過程で等価に処理されるとすれば、誤差の計算は両眼の入力信号が統合された後に行われている可能性がある。
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Journal of Neurophysiology
巻: 106(3) 号: 3 ページ: 1218-1226
10.1152/jn.00278.2011
International Journal of General Medicine
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