配分額 *注記 |
9,200千円 (直接経費: 9,200千円)
2000年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1999年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1998年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
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研究概要 |
日本鯨類研究所が、1981〜1999年の南氷洋ミンククジラ捕獲調査によって収集した試料約500検体および1994年〜1998年に北太平洋のミンククジラ捕獲調査によって収集した試料約160検体を分析に供し、以下のような結果を得た。 1)ミンククジラの臓器・組織試料に適した環境化学物質の分析システムを構築した。また、有機塩素化合物、重金属類(有機スズを含む)の体内分布を調べ、生態解明にはそれぞれ皮下脂肪および肝臓を供試するのが適切と考えられた。 2)有機塩素化合物および毒性元素の残留濃度には、性、食性、年齢による違いがみられ個体群判別等に供する検体は目的に応じて選別することが必要となった。 3)Fe,Hg,Cdなどの重金属類およびPCBs,DDTs,CHLs,HCHs,HCBなどの有機塩素化合物を化学指標にして北太平洋産ミンククジラの個体群判別を試みたところ、オホーツク産ミンククジラは、DDTsおよびPCBs濃度が高くHg濃度の低い個体群とHCHsが低くCd濃度が高い個体群に2分され、前者は日本海/黄海/東シナ海個体群、後者は西太平洋個体群に由来すると推察された。 4)有害物質を代謝する肝臓の薬物代謝酵素を測定したところ、南氷洋産ミンククジラでは低濃度の有機塩素化合物残留でチトクロームP-450のCYP1Aが誘導されており、本種はこの種の物質の毒性影響に対して敏感なことが推察された。また、ミンククジラのチトクロームP-450 1A遺伝子のアミノ酸配列を調べたところ、イシイルカのそれと高い相同性を示した。 5)南氷洋産ミンククジラの皮と肝臓について12種類の微量元素を分析し多変量解析により個体群判別を試みたところ、III区、IV区、V区海域で捕獲したオスでは元素濃度のマトリックスに有意な差がみられ、これらの個体群は回遊や繁殖、摂餌行動を異にしていることが示唆された。また、本研究により、ミンククジラの生態解明手法として皮を用いた非捕殺的モニタリングが有効であることを実証できた。 以上の研究により、有機塩素化合物や重金属類の一部は、ミンククジラの生態や生理機能解明の有力な化学指標として活用できることがわかった。
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