研究概要 |
【目的】我々は臨床の場で検査可能な運動失調の機能障害評価票を作成し,標準化を試みること,および動作解析の手法用いて客観的な数値による運動失調の詳価を行い,作成した評価票の評価結果との整合性を検討することを目的として本研究を計画した。【対象と方法】作成した評価票は上肢,下肢及び体幹に関する評価項目があり,11種類の大項目とそれを構成する34の小項目からなる。作成した評価票を用い,運動失調を有する患者116例を対象として,評価を行った。その内訳は脊髄小脳変性症50例,小脳・脳幹部の出血・梗塞・腫瘍39例,その他27例,平均年齢53.4±15.3歳,男女比65:51であった。一致係数κを用いた検者内及び検者間信頼性の検討,信頼性係数の計算,既存の評価法との相関を求めることによる基準関連妥当性の検討,及び因子的妥当性の検討を行った。また,7例を対象として,歩き始めの3次元動作解析を行い,体重心と左右脚合成の床反力中心の経時的変位について,健常者のデータとの比較,検討を行った。【結果及び考察】一致係数κは検者内信頼性で34項目中30項目,検者間信頼性で34項目中32項目で0.41以上であった。信頼性係数αは0.69〜0.97で,良好な結果が得られた。上肢評価項目と点打ちテスト,線引きテストの間及び下肢・体幹評価項目と運動失調の運動機能ステージの間に有意な相関を認め,基準関連妥当性を確認した。因子分析の結果,8つの因子を抽出した。11の大項目中5項目で単一の因子に最大負荷量を有しており,因子的独立性を有していた。動作解析を行い,歩行開始時において運動失調患者と健常者力異なる動作パターンが観察された。歩行開始時の体幹の動揺を肩峰マーカーの位置を計測することで定量的に計測した結果,運動失調の重症度と相関する傾向があった。以上より,これまで検討を行った範囲では,我々の作成した評価票は実用に耐えうる信頼性と妥当性を有していると考える。
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