研究概要 |
舞鶴層群は夜久野オフィオライトの表層堆積物であり,両者はセットで,オフスクレイピング型の構造をもつペルム紀付加体を成している.変成作用は両者に共通して中圧型であり,またジュラ紀の後退変成作用を除き,付加するときに限り1度だけ変形と同時に起こった.つまり,付加が進行する際,海溝は異常な高温状態にあったことになる.この高温状態は沈み込む海嶺に起因し,夜久野オフィオライトはその海嶺そのものに由来すると考えられる. 舞鶴層群と夜久野オフィオライトは斑糲岩,玄武岩,泥岩,砂岩と礫岩の層序を持っている.これらはスラストで繰り返し,斑糲岩と玄武岩主体の部分が夜久野オフィオライト,泥岩と砂岩・礫岩主体の部分が舞鶴層群である.玄武岩と泥岩の間に赤色チャートが見られる.石灰岩は礫岩の岩片として,また泥岩中のブロックとして認められる.南東フェルゲンツの非対称褶曲も見られる.堆積岩にはこのような褶曲の軸面劈開をなす圧力溶解劈開が発達する.歪みはオブレート型である.一方で,左ずれ・スラストセンスの非対称微少構造が例外的に認められるが,これはスラスト形成に関連した構造である.変成度の検討から,斑糲岩・玄武岩にも非対称褶曲とスラストによる繰り返し構造が推定され,スラストは実際露頭でも観察される.斑糲岩の層状構造はこのような褶曲の軸面劈開に相当する.超丹波帯の構造は舞鶴帯の構造と共通しているが,丹波帯にはこれらの地帯とは対照的に右ずれ剪断帯である. 斑糲岩と玄武岩の変成鉱物を検討した結果,これらはグラニュライト相からぶどう石パンペリー石相までの中圧型の変成作用を被っていることを再確認した.この変成作用時に斑糲岩の層状構造が生じている.泥岩については,イライト結晶度を測定し,大部分緑色片岩相程度の変成度をもち,やはり中圧型に相当する変成作用を被っていることを示した.イライトは泥岩が付加する際の,圧力溶解劈開形成時に晶出しているので,この変成作用は付加時の変形の際に起こっている.これ以前の変成作用は認識できない. D2のキンクやクレニュレーションが認められる.逆転翼を伴った地質図規模のキンクが観察され,これは斑糲岩や玄武岩の変成鉱物の検討からも存在が推定される.斑糲岩にはD2時の後退変成作用が観察される.キンクは丹波帯にもあるので,D2はジュラ紀で,オフィオライトの最終定置に関連している.
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